11話 二刀流の獣型
【火星:訓練施設】
《戦闘訓練:桜庭梨花》
突如、背後に現れた二刀流の獣型は、剣先を地面に向け仁王立ちしたまま動かない。それはまるで梨花の攻撃を待っているかのようだった。
「あんただけ覇気が全く違うっつーノォオオ!!」
梨花は、懐に入るのはマズいと判断し、持っていた小型ナイフに光源を付与したものを光速で相手に投げた。
だが、二刀流の獣型はいとも容易く右手に持っていた刀で薙ぎ払う。梨花は刀が薙ぎ払われた瞬間を狙い、一気に間合いを詰め懐に入る。前回同様、守りし者を展開し体を両断しようとした瞬間、梨花の右横腹に違和感を覚える。
「ハァ?」
それは刀の先端が梨花の横腹に刺さっていたのである。状況を理解した梨花は一旦後ろに下がる。
「(いつの間に刀が?! それにあいつ私を全く見ずに攻撃していやがったな)」
そう。二刀流の獣型は顔を正面に向けたまま一切動かさず攻撃していたのである。それだけでなく、刀の先端だけ刺してくるという繊細な技術を要する剣裁きをわざわざ披露してきたのだ。本来ならそのまま貫かれてもおかしくない状況でだ。
「舐めてらっしゃるのですか?」
「……」
二刀流の獣型は何も答えない。それもそのはず相手は単なる兵器であり機械なのだから。
沈黙がしばらく続く中梨花は考えていた。ある可能性のことを。刀を有する獣型かつ見た目は獣型であるが獣型の利点を使って攻撃してこないこと、それ以前に好戦的でない。明らかに兵器でなく人の立ち回りだと、しかもかなり強い人であること。
「(人だと思って行動した方がよさそうですね。戦い方を変えますか)」
梨花は腰に控えていたライフルを取り、光源を溜める。光源を溜め込んだ
ライフルは能力者が能力を解除しない限り半永久的に撃ち続けることができ、撃ちだされる弾の威力・速度どれをとっても従来の銃とは桁違いの代物になる。
「次はこんなのはどうですかッ!!」
乱射された光の弾の数々は二刀流の獣型へと向かう。二刀流の獣型は二本の剣を縦にし、少し斜めらせ刀の刀身で光を屈折させると軌道をずらす。庇い切れない残りの弾は、これも容易く躱して見せた。その動きには一寸の狂いも迷いもなかった。
これ以上撃っても無駄だと判断した梨花はライフルを下す。
「反則級でしょ、あなた」
さすがの梨花も例え二刀流の獣型の中身が同期した人であっても、あまりにも人間離れした動きに驚きを隠しきれなかった。
すると一本のアナウンスが入る。
「残り7機。撃破者・鴻崎 美大」
「(あの元気な子よね。なかなかやるじゃない)」
負けてはいられないと自分に気合を入れる梨花。ライフルを腰にしまった梨花はもう1本残っていた小型のナイフを右手にとり、光源を付与し刀をイメージする。すると、刃の部分の光が伸長し、それはやがで光の刀身と化した。
梨花のとっておきだ。受け止めようとも受け止められず、相手の間合いを無視して一方的に攻撃する伸縮自在の光の刀。練度が低いせいで安定はしないが意表を突くにはもってこいの武器。
それを構え繰り出そうとした瞬間。
『ア゛ア゛アアァァァアア゛ア゛!!』
女の子の悲鳴だ。梨花は、自分から送る回線はプライベートにしてたものの、第3期生の他の人たちから聞こえてくる回線は、音量は最低限にしていたがオープンにしていたのだ。つまりグループの通話にいるが、ずっとミュートにしている感じで、いざという時の為に講じておいたのだ。
「(美大ちゃん?! やられたのかしら??
助けに行きたいけど今は...)」
二刀流の獣型と戦闘中。
だが二刀流の獣型は思いがけない行動に出る。
「えっ!!」
二刀流の獣型は刀を鞘に収めた。そして、2番目に遭遇した獣型と同様の速さ、かつ脚力の持ち主だったのか、一蹴りで戦線から離脱してしまったのだ。追いかけようとしたが、美大のことが気になりその場に留まる。
すぐさまプライベートにしていた回線をオープンに切り替え安否の確認をする。
「美大ちゃん大丈夫ですか?! 今どの辺にいますか??」
応答はない。その代わり、激しい衝突音だけ聞こえた。
その衝撃があった方角は遠くからでも確認できるような砂煙が立っており、梨花はそれを目視で確認すると、光の速さで飛び出した。
こんにちは、霜月 京と申します。
まだ小説とか文章とか書くのに不慣れなのでこれから頑張っていきますので、どしどし感想・アドバイス送って下さい!
【解 説】
〇模擬戦闘兵器:二刀流の獣型
二つの刀を使いこなす黒き獣型。
獣型の特徴を駆使もせず好戦的でない面を持ち、人に近い動きをすることから桜庭梨花から誰かが同期しているのではないかと怪しまれている。