隣のインテリ眼鏡が憧れのコスプレイヤー(女装)だった件
私の隣の席には、超絶ウザい男がいる。
「織田さん、そこ、公式間違えてますよ」
ツィっと眼鏡を押し上げながら指摘する男に、私のシャーペンの芯がボキリと折れた。
「人のノート、勝手に見ないでくれませんかね?」
「すみません。ですが、宿題は前日のうちに終わらせておくのが好ましいかと」
黙れインテリ眼鏡。お前は私の小姑か。
私は頬を引きつらせながら、ノートに消しゴムをかけた。
「しょうがないじゃないの。昨日は忙しかったのよ」
「スケジュールが上手く管理できない言いわけですね」
イヤミな物言いに、私のこめかみがヒクりと動いた。
神谷堅司。こいつは私の天敵だ。
ことあるごとに私の行動にダメ出しをしてくるこの男と、何の因果か二度も隣の席になってしまったのは、不運としか言いようがない。
私のことを嫌いなら放っておけばいいと思うのに、ことあるごとに小さな指摘をしてくる、とても面倒くさいヤツなのだ。
「勉強しか趣味がなさそうな神谷くんと違って、私は多趣味なの。休日は忙しいの」
その言葉は嘘ではない。私は今、大っぴらに人には言えない趣味に夢中であった。
コスプレ。それが、私の趣味だ。
アニメやゲームのキャラクター衣装をイベントで着る。
私はいわゆる、コスプレイヤーと呼ばれる人種なのだ。
大っぴらに宣言することは出来ないけれど、月2でイベントに参加する程度にははまっている。
しかしながらこの趣味、なかなか時間を浪費するのだ。
服を着るだけなら簡単じゃん。と思うかもしれないが、その着るための服は、たいがいがコスプレイヤーの手作りだったりする。
アニメキャラクターの衣装を研究し、自分のサイズに型紙をおこして、布を裁断して縫製する。
服だけじゃない。靴や帽子といった小物から、魔法の杖や剣だって、キャラクターに合わせて自作するのだ。
それにかかる労力はかなりのもの。
私は来週行われるコスプレイベントに参加を予定している。
今はそのための衣装を、必死で制作しているところであった。
正直、縫製が間に合うか微妙なところ。宿題にかまけている時間などないのだ。
「僕だって、勉強以外に趣味はあるのですが」
「ああそうなの。神谷くんの趣味とか、あんまり興味ないよ」
私は神谷くんを冷たくあしらった。
神谷くんの趣味なんて、きっとチェスとか絵画とか詩集とか、私には理解できない趣味でしょうよ。
真面目を凝縮したようなこの男が、漫画やゲームを見て笑っているところなんて想像できない。
きっと私とは相いれない人種だ。そんな男に、思考を割いている暇などない。
私は授業開始時間までに、この宿題をやっつけなくてはならないのだ。
呑気におしゃべりしている時間などない。
雑多な用事は学校ですべて終わらせて、家に帰ったら縫製の続きをしなければ!
なにせ、来週のイベントは特別なのだ。
私の憧れのレイヤーさんが、同じイベントに参加表明を行ったのである。
コスプレネーム、春野姫子。
彼女がコスプレ会に颯爽と姿を現したのは、今から1年くらい前のこと。
『春野姫子はほぼ二次元』
とんでもない高クオリティなコスプレで、そんな呟きがSNSを賑わせた。
彼女は卓越したメイク技術でキャラクターそっくりの顔を造り、さらにはちょっとした仕草や歩き方までキャラクターに似せてくる。
まさに、歩く二次元だ。
春野姫子は私の憧れの人なのだ。
そんな憧れのコスプレイヤーなのだけど、姫子さんはとても気さくな人だった。
私はもちろん彼女のSNSアカウントをフォローしているのだけど、彼女はなんと私のアカウントをフォローバックしてくれたのだ。
それだけじゃなく、私が呟いた縫製の悩みについてもさりげなくアドバイスをくれたりする。
腕も良くて、美人で、親切だとか、パーフェクト超人かよって思う。
「興味ない、ですか」
「なに?」
「いいえ、べつに。――でも、趣味に夢中になるのも結構ですが、学生の本分は勉学ですよ」
「そんなこと、言われなくても分かってるよ」
「どうですかね。宿題を忘れてくるなんて、やるべきことをおろそかにしていると、趣味でもきっとうまくいきませんよ」
神谷くんのとげのある物言いは、流石に少しばかりカチンとくる。
「神谷くんに何が分かるっていうのよ」
苛立ったのは、きっと、彼の言葉が図星だったからだ。
私のコスプレは、あまりクオリティが高いとは言い難い。
縫製だっていまいちだし、メイクだって下手くそだ。
「……すみません。ちょっと、言い過ぎました」
神谷くんは罰の悪い顔をすると、軽く首をすくめて自分の机に向き直った。
今日はずっと楽しみにしていたイベントの日だ。
なんとかコスプレ衣装を完成させた私は、意気揚々電車に乗った。
今日のイベントは、とある洋館を借り切っての、ジャンル自由なコスプレイベントだ。
雰囲気のある洋館で、どこで撮影しても絵になるとたびたび会場に選ばれる場所であった。
今日のコスプレイベントのジャンルはよろず、つまりなんでもOKでだ。
私は最近人気のある、携帯アプリゲームのキャラクターのコスプレで参加する。
今回のイベントは刀などの長物もOKだけど、私のキャラクターは小物が無いので荷物はそう多くない。
キャリーバックを転がして、受付で登録を済ませると、更衣室へと私は向かった。
コスプレ衣装に着替えながら、きょろきょろと周囲を見回す。
けれども、姫子さんらしき人の姿はない。
そういえば、今まで姫子さんを何度かイベントでみたけれど、準備をしているところを見たことがなかった。
あの卓越したメイク技術。ぜひとも準備風景を見てみたい。
まあしかし、メイクなんかは基本的に家で終えてくる場合が多いから、たとえ更衣室で一緒になったところで、あの神のようなメイク技術が拝めるわけではないだろうけど。
そんなことを考えながら着替えを終えて会場に出ると、ひときわ大きな人だかりが見えた。
パシャパシャと、フラッシュライトが明滅する中、カメコ達の中心に彼女は立っている。
いた、あれ、姫子さんだ!
姫子さんはメイクの達人である。毎回、キャラクターの顔に近づけるためにメイクで顔を自在に変える。
なので、彼女の地の顔は極めて分かりづらい。
だけど、そのクオリティと立ち振る舞いでひと目で彼女だと分かるという、凄い人だ。
彼女の今日のコスプレは、私と同じジャンルのキャラクターだった。
けれども私が比較的衣装を作成しやすいキャラクターを選んだのに対し、彼女は鎧や大剣といった、複雑なパーツの多いキャラクターを完璧に再現していた。
っ、やっばい。なに、あの再現率! 相変わらずの神過ぎる!!
歩く二次元の名は伊達じゃない。
あまりのハイクオリティーなコスプレに、私は思わずミラーレス一眼を片手にカメコ達の輪に加わった。
自分の撮影? そんなもの、後回しに決まっている。
「こっちも一枚、お願いします」
声をかけてからカメラを構えると、私に気づいた姫子さんが、ふっと甘い笑みを浮かべて視線をくれる。
ヤバいどうしよう、鼻血でそう。
興奮しながら、私は夢中でシャッターを押した。
姫子さんはポージングも完璧なので、どの角度から撮っても素晴らしく絵になるのだ。
ああ、すばらしい一枚が取れた。
カメラを撫でながら、私はニヤニヤと笑う。
この一枚をとれただけでも、このイベントに参加した甲斐があるものだ。
あとは馴染みのレイヤーさんを探して、一緒に写真でも撮ろうと、私が背を向けたその時だった。
「あの……」
背中におずおずとした声が突き刺さる。
振り返ると、少しばかり緊張したような顔をした姫子さんが立っていた。
「よかったら、一緒に撮りませんか?」
姫子さんは、女性にしては少し低めのハスキーボイスでそんな提案をした。
「うひぃ、わ、私がですか?」
「はい、駄目でしょうか」
私はあわあわと口を閉口させた。
姫子さんは孤高のレイヤーだった。
どこのサークルにも属さず、いつもソロでイベントに参加し、頼まれれば撮影を断らないものの、自分から他のレイヤーに絡みにいくこともない。
SNSでは気さくだけれど、イベントではとても無口で、あまりしゃべらない人という印象なのだ。
そんな姫子さんが、私に声をかけてくれた!?
「ももも、もちろんOkです!」
私は上ずった声で答えた。
私なんかが姫子さんの隣に並ぶのは申し訳ない気がするが、それでもやっぱり2ショットは嬉しい。
近くのカメコさんに撮影を頼むと、私は緊張しながら姫子さんの隣でポーズをとった。
姫子さんはちらりと私に視線を向けると、何かを言いたそうな顔をして黙る。
なんだろう。ポーズ、なにか変だったかな。
「あの、ありがとうございました」
私はどきまぎしながら、姫子さんにお礼を告げる。
すると姫子さんはなんともいえない複雑な表情をした。
「やはり……気づきませんか」
「え?」
「いえ、こっちの話です」
姫子さんは、どこかがっかりした様子で呟いた。
なんだろう、私、何か彼女に悪いことをしたのだろうか。
私が首をかしげると、姫子さんは悪戯っぽい笑みを浮かべて私に告げた。
「それでは。――イベントも良いですが、宿題を忘れちゃあ駄目ですよ?」
「え?」
そうやって笑う彼女の顔に、妙な既視感を覚えて、私は首を傾げたのだった。
翌日。イベントハイが抜けきれない私に向かって、インテリ眼鏡くんがじとっとした視線を向けてきた。
「今日は、ちゃんと宿題をやってきたんですね」
「神谷くんには関係ないよ」
どうして彼は、いちいち私に突っかかるのだろうか。
私がぷいっと横を向くと、神谷くんは大きなため息を吐きだした。
「どうして気づいてくれないんでしょうかね」
「は、何が?」
「……なんでもありません」
神谷くんは拗ねたように呟くと、眼鏡のフレームを押し上げて、唇を尖らせたのだった。
(よかったら、今度一緒にスタジオあわせをしませんか?)
姫子さんからSNSでそんなメッセージが飛んできたのは、あのイベントからひと月が経過したときだった。
放課後の教室で、ピロリンという通知音が鳴る。
SNSに送られたそのメッセージを見て、私の胸は高鳴った。
あの姫子さんが、私と、あわせを!!
あまりのことに、私は思わずスマートフォンを取り落とした。
教室の床を勢いよく滑るスマホを拾い上げてくれたのは、隣の席の神谷くんだ。
神谷くんは自分が持っていたスマホをポケットに突っ込むと、私の携帯電話を手に持った。
「落ちましたよ」
「あ、ありがとう」
いまだ動揺が収まらない心を必死で落ち着けながら、神谷くんからスマホを受け取る。
「顔が赤いですが、何かありました?」
「か、神谷くんには関係ないよ」
もはやお馴染みのようなセリフを告げてスマホを受け取ると、彼はふっと息を吐いた。
「関係なくもないんですけどね」
「え?」
神谷くんは、何かを言いたげな表情で、じっと私の顔を見つめる。
こうやって正面から目があうと、神谷くんはなかなか整った顔をしているのが分かる。
「な、なに」
私は少しだけどぎまぎしながら、眉根を寄せた。すると、神谷くんはふっと目をそらす。
「べつに、なんでもありません」
そういうと彼は、拗ねたような態度で鞄をもって、教室を出て行った。
その態度に私はやはり首をかしげる。
あの男は、いったいどうしていつも私に突っかかってくるのだろうか。
姫子さんとの撮影の日は、楽しみ過ぎて朝の5時に目が覚めた。
私はめちゃくちゃ気合を入れてメイクして、この日のために準備した衣装を鞄に詰めた。
そういえば、他のメンバーって誰が来るんだろう。
集合時間と場所は聞いたけど、メンバーについては詳しく知らない。
けれども、姫子さんは有名レイヤーだ。
彼女が主催する撮影会ならば、参加する人もクオリティが高いに違いない。
一人浮いてしまわないかドキドキしながらスタジオについた。
受付で尋ねると、先に主催者がスタジオに入っていることがわかる。
このドアの向こうに姫子さんがいる。
「こんにちは。今日はよろしくお願いしま――」
ドキドキしながた扉を開けて、中にいる人物を見つけて私の思考が停止した。
スタジオの壁にもたれるようにして立っていたのは、隣の席のインテリメガネ、神谷くんだったのだ。
神谷くんは私と目があうと、つっと眼鏡を押しあげた。
「こんにちは、織田さん」
「こ、こんにちはって、え、え、どうして神谷くんがここに!?」
私は動揺して口を閉口させる。
もしかして、場所を間違えた!?
「場所を間違えたわけではありませんよ。春野姫子が指定したスタジオはここです」
「……え? 神谷くんがなんで姫子さんのことを知ってるの。もしかして、知り合い?」
神谷くんの口から出てきた姫子さんの名前に、私は目を白黒させた。
けれども神谷くんは首を左右に振ると、もっと驚きの事実を告げた。
「知り合いといえば知り合いですね。春野姫子は僕ですから」
「…………え?」
あまりの告白に、私の思考が停止した。
「ごめん、今、なんて言ったの?」
「だから、春野姫子は僕だって言ったんです」
「なんの冗談?」
「冗談じゃありません。僕のコスプレネームが春野姫子なんです。イベントで何度もあなたと顔を合わせていたのは、正真正銘僕ですよ」
私の脳みそが、考えることを拒絶した。
「嘘だ! だって、だって、姫子さんは女の人で……」
「主に女装コスをしていますが、女だと宣言したことはありません」
「え、ええ!? た、確かに女かって確認したことはないけど。でも、え、あんなに美人なのに!?」
「褒めていただきありがとうござます」
「神谷くんを褒めたわけじゃなくて、え、でも、ええええええ!?」
私は混乱していた。
だって、だって、憧れの姫子さんが、男!?
それだけでもありえないっていうのに、その正体があのいけ好かない神谷くんだって!?
「嘘でしょう!? お願い、嘘だって言ってよ!」
「嘘じゃありませんよ。まったく、何度も何度もイベントで顔を合わせてるっていうのに、一向に気づく様子がないんですから」
「気づくわけないじゃん!! どう見ても完璧に女だったよ!!」
「褒めていただきありがとうございます」
だから褒めてないって! あれ、いや、褒めてるのか!?
「なんで今まで黙ってたの!」
「毎週女装してコスプレしています。なんて、人に言えると思いますか?」
それは確かに言えない! 言えるわけないよ!
「じゃ、じゃあ、なんで私に正体をバらしたの」
私は神谷くんが姫子さんだなんて、1ミリだって気づかなかった。
想像したことすらない。こんな風に正体をバラさなければ、これからもきっと気づかなかっただろう。
「それは、織田さんがいつまでたっても気づいてくれないからです」
「え、なにそれ。正体バレたら困るんじゃないの?」
「困りますよ。女装コスプレしてるなんてバレたら、僕は学校での立場を失います」
「じゃあ、なんで気づかれたかったのよ」
私が言うと、神谷くんは唇を軽く尖らせた。
「だって、織田さん、いつだって僕を邪険にするじゃないですか」
「え?」
「春野姫子には楽しそうに笑顔を向けてくれるのに、僕に対する態度はいつも冷たいままですし」
「えええええ?」
私は口を閉口した。
ちょっとまって、意味が分からない。
神谷くんは、いったい何が言いたいの!?
「ちょっとまって。そのセリフだと、なんだか告白みたいに聞こえるよ!?」
「紛れもなく告白しようとしているのですが」
「え、え、えええええ!?」
あまりの衝撃の連続で、私の思考はショート寸前であった。
顔を真っ赤にしておろおろする私を見て、神谷くんは小さく息を吐き出した。
「やはり、気づいてなかったんですね。前々から思っていましたが、織田さんはニブ過ぎです」
「き、き、気づくわけないよ! え、なにそれ。神谷くんって私が好きだったの?」
「はい」
「はいって、え、ええええ!?」
叫び過ぎて喉が痛くなってきた。
信じられない。神谷くんが、私を、好き!?
「なんで、どうして!?」
自分で言うのもなんだが、私の神谷くんに対する態度はひどいものだった。
私は神谷くんのことをいけ好かないと思っていたし、自然、態度も冷たくなっていた。
そんな私の、いったいどこを好きになったというのだ。
「最初に見た時から、ずっと気になっていたんです」
「えっ?」
うそ、まさかのひとめ惚れ!?
「コスプレがあまりに似合ってなくて」
「そっちかよ!!!!」
思わず私はつっこんだ。
酷い話だ。いや、分かってる。私のコスはレベルが低い。
指摘されなくても分かってる。だけど、あまり言われたくはなかったよ!
「織田さんは、素材は良いんです。だけど、毎回毎回、選ぶキャラクターがダメ過ぎる!」
「まさかのダメ出し!?」
「どうしてあなたはいつも、自分に似合わない高身長キャラのコスプレをしようとするのですか!」
言い当てられて、私の頬が引きつる。
「だって、だって、好きになるキャラがそういう方向だし」
「好きなキャラと似合うキャラは違います」
「それに……似合いそうなキャラクターは、衣装が難しそうなのが多くて」
「安易な妥協ですね」
くそ、やっぱり神谷くんはヤな奴だ!
っていうか、なんで私のコスプレの話になってるの!?
神谷くんがどうして私に惚れたのかって話じゃなかったの!?
「まあ、そんな感じであなたのコスプレが気になって。ずっと、僕がプロデュースしてみたかったんです」
「さようですか」
「織田さんには何のコスプレが似合うのか。観察していたら、いつの間にか好きになりました」
「………………」
なんだろう、この、告白されてもあまり嬉しくない感じ。
「というわけで、お願いです。織田さん。あなたを僕にプロデュースさせてもらえませんか?」
「ねえ、この流れって普通、付き合ってとかって話じゃないの?」
「そんなものは後回しです!」
後回しなのかよ!
なんだコイツ、本当に私が好きなのか!?
「織田さんをひと目みたその時から、僕は自分の手でコスプレさせたくて仕方がなかった」
「はぁ」
私は妙に脱力した返事を返した。
「いかがでしょうか。頷いていただけるなら、春野姫子直伝のメイク術を伝授しますよ」
「え、マジで!?」
私はがばりと顔を上げた。それは気になる、とても気になる。
「ついでに僕もついてきます。――いかがでしょうか?」
「神谷くんの方がついでなんだ」
「当然です。コスプレイヤーにとっては、技術の方が重要でしょう?」
自信満々に言われた言葉に、私は思わず噴き出した。
真面目でつまらない、私とは違う人種の男。そんな風に思っていたけれど。
「――めちゃくちゃ、面白いじゃん」
「は、何がです?」
「こっちの話」
私は思わず口元を歪めた。
ちょっとばかりイメージが違ったけれど、憧れの春野姫子さんとお近づきになれるのだ。
このチャンス、コスプレイヤーとして、逃せるわけは無いわよね。
「その話、乗ったよ。姫子さんは本当に凄いってずっと思ってたんだ。プロデュースしてくれるっていうなら、乗らないわけない」
私が言うと、神谷くんは満足したようにうなずいたのだった。




