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その後、守縫恵人(かみぬいけいと)がどうなったかと言えば、補導された後、両親と学校にもそのことについて連絡が行き、弁護士同伴で事情を訊かれ、『二度と<もえぎ園>には近付かない』と宣誓することで、今回は放免となった。


ただし、次また同じようなことをすれば今度こそ家裁送致になると念を押された上でだが。


なお、両親については、<もえぎ園>に提出した書類に書かれた『長男についても正しく管理監督し、次男への暴行・暴言・中傷等を行わせないことを努力します』という条項に触れるということで、厳重注意を受けた。


今回については結局、あくまで<補導>止まりだった為に前科などはもちろんつかないものの、補導歴つまり<補導されたという前歴>は付くことになり、補導された事実が学校にも知れたことから、当然、内申書にも影響することになるだろう。


だがこれは、守縫恵人(かみぬいけいと)自身が法に触れる行為をしたことによって自ら招いたことであり、彼自身にその責任がある。弁護士が何度も自宅を訪れて守縫久人(かみぬいひさと)に対する触法行為をやめるように前もって釘を刺しておいたにも拘らずそれを全く無視し、<もえぎ園>にまで押しかけて脅迫を行ったのだから、<子供の悪戯>では済まされないのだ。


己の行為を省みて考える機会は与えられてきたというのに。


このことからも、守縫恵人(かみぬいけいと)守縫久人(かみぬいひさと)の両親に子供を指導監督する能力は皆無と見做され、守縫久人(かみぬいひさと)の保護は当面の間継続されることが改めて決定した。最長、彼が高校を卒業するまでとなる。


それ以降はさすがに<もえぎ園>の管轄ではなくなってしまうのだが、実は園出身者により、十八歳以上の<事情を抱えた者>の相互扶助組織が、NPO法人という形で運営されており、もし彼が社会に適応できないとなれば引き続きそちらで支援することになるだろう。


もっとも、守縫久人(かみぬいひさと)自身は、<もえぎ園>での生活により『男らしさ』『女らしさ』の呪縛から解き放たれたようで、自身の<性別>についてはこれからまたゆっくりと考えることにしたそうだ。


「ま、今回のケースについては、家族に問題があったという点が大きくて、それで彼が精神的に不安定になってしまったっていうのもあったかもしれないわね。


幸い、アイデンティティが揺らぐほどの事例じゃなかったと思うけど、どう? ご感想は?」


敢えて口出しも手出しもせず成り行きを見守るように宿角蓮華(すくすみれんげ)に指示されていた千堂京香(せんどうきょうか)は、感想を求められて、


「正直、頭がパンクしそうです……」


と答えるのが精一杯なのであった。



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