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男の子の遊び、女の子の遊び

守縫久人(かみぬいひさと)が<もえぎ園>に保護されて一週間が経つ頃には、彼はすっかり馴染んだ様子だった。彼の女の子っぽい見た目や仕草に対し、誰も何も言わない。幼い年少組の園児達でさえ、『変!』というようなことを言わない。


何しろここでは、<男らしく><女らしく>ということを誰も本気で言わないのだ。だから、男は男らしく、女は女らしくいう感覚がそもそもない。


もちろん、途中から保護されてきた子供などには親などに<男らしく><女らしく>という概念を植え付けられた場合もあるので最初のうちは拘ったりするものの、他の誰もそんなことに拘らないのでいつの間にか薄れてしまうのである。


なのに、男の子は不思議と男の子と分かる振る舞いをするし、女の子は女の子と分かる振る舞いをした。本質的な感覚として、いちいち言わなくてもそういうものが備わっていると窺わせる事実だった。


それでも、時折、守縫久人(かみぬいひさと)のように当てはまらない子供もいる。だがそれで良かった。他人を蔑ろにし傷付け貶めるようなことをしない限り、その振る舞いについて諭されることもない。


男だから女だからでどちらかを特別扱いもしない。興味のあること、やってみたいと思うことならヒーローごっこでも人形遊びでも、好きにすればいい。


<もえぎ園>では、玩具も豊富に取り揃えられていた。殆どが寄付によるものだが。特にここの卒園者が、何かというと玩具を持って訪ねてくるのだ。


正月、節分、桃の節句、入学や進学、端午の節句。


梅雨で外で遊べないだろうとか、


夏だから水遊びしたいだろうとか、


秋だから運動したいだろうとか、


ハロウィンだからとか、


クリスマスだからとか、


とにかく何だかんだと言っては何人も玩具を持ってくるのである。男の子向けもあれば女の子向けもある。知育玩具のようなものから一万円以上もするような合体ロボットのフルセットまで。携帯ゲームもTVゲームもある。


『親に見捨てられた施設の子』だからといって僻む必要などまるでないくらいに、いや、園児全員に行き渡るようにと次々差し入れられるので、あまり使われなくなった玩具はバザーで格安で売りに出されるほどに数も種類も豊富であり、明らかに一般家庭のそれを大きく上回っていた。


その中で好きな玩具を選んで遊ぶこともできた。男の子がおままごとセットで遊んでても、女の子が合体ロボットで遊んでても誰も何も言わない。


そんな中で、他の園児達に比べれば<お兄ちゃん>だった守縫久人(かみぬいひさと)も、自然と、小さな子のおままごとに付き合ったり、ロボット遊びに付き合ったりしていたのである。



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