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あんまり甘く見ない方が

自分が子供達に対して諭してきたことを改めて斉藤敬三(さいとうけいぞう)に言われ、蓮華は顔を伏せた。


場合によってはもうこれで自分は死ぬかもしれないと覚悟を決めて今回のことを仕組んだものの、こうして生き延びてみれば本当に愚かだったと自分でも思った。


健侍(けんじ)健臣(けんしん)が健雅とは違う生き方を選んだ以上、残った宿角家の因業にケリをつけるにはこうするしかない』


と思い込んで視野狭窄に陥っていたのだとも思った。


とは言え、健雅については現状では塀の向こうに送り返すのが手一杯だったのは事実だろう。蓮華がもし死んでいればそれこそ二十年を超える刑期も有り得ただろうから、他人を暴力で従わせるような真似ができる間は塀の中に閉じ込めておけたかもしれない。


なお、こう言うと、


『あんなクズを刑務所で養ってやるとか税金の無駄だ!』


などと言う者もいるだろう。しかしそれについては、蓮華は、普通の資産家なら行っていて当然の範囲の<節税対策>すら一切行っておらず、それによって支払われた税金の額だけでもおそらく健雅一人分くらいの経費は賄えていたはずである。難癖を付けるのは勝手だが、このような形で贖えることも知っておくべきだろう。


そして蓮華は、相続者がいない状態で自分が死ねば財産はすべて国庫に納められることも想定していた。これももちろん健雅のためだ。


『あんなクズを刑務所で養ってやるとか税金の無駄だ!』


と世間に言わせないために。


ちなみに健雅がいなければ普通に節税はしていただろう。そうして浮かせた分は子供達に回すことにするだろうが。


蓮華にとって金銭はあくまで道具にすぎないのだ。


自身の目的を果たすための。


しかし、これらについても斉藤には呆れられてしまった。


「そこまで思い込む必要もないと俺は思うがね」


などと。


いずれにせよ、これで取り敢えず再度時間は稼いだ。健雅の行状を見れば今度も仮出所は認められず満期まで獄中生活をすることになる公算が高い。


次に出てくるのは六十半ば。まだまだ油断はできない年齢だが、またしっかり監視をつけることは予定している。


とにかくもう他人に危害を加えさせないように注意を払う。


健雅が殴って怪我をさせたホステスについては治療費なども蓮華が全てを弁済した。慰謝料も払った。


「やめろって言ってもどうせ続けるんだろう? なら、俺にも協力させろ。もちろん、子供達には知らせない。


ただ、あの子達をあんまり甘く見ない方がいいと思うぞ。遠からず嗅ぎ付けるだろうな」


「……でしょうね……」



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