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出所二日目

二時間後、特殊浴場から出てきた健雅を、二人の探偵が尾行する。すると今度はやはりパチンコへと入っていった。


ただ、特殊浴場で金を使ったはずなので、果たしていくら残していているのかはいささか疑問だったものの、おそらく我慢できなかったのだろう。


探偵も、一人は同じようにパチンコ店に入り、もう一人は出入り口が見える位置で張り込みを続けた。


もし大負けでもしようものなら腹立ち紛れに事件を起こす可能性もある。油断はできない。


が、引きが良いのかなんなのか、なんと健雅は大当たりを出し、


「おっしゃーっ!!」


などと興奮していた。まさか出所後初のパチンコで大当たりを出すとか、なるほどこれはやめられなくもなるだろう。


とは言え、さすがに大当たりはずっとは続かず、その後はとんとんと言った感じで、夜まで粘ったものの諦めたのか換金に行き、出玉から推測するに所持金は元の五割増といった感じになったようだった。


それでもまあ、上々と言えるだろうか。その所為か健雅の機嫌もよさそうだ。


すると今度はいわゆる<キャバレー>と呼ばれる店に入っていき、ホステスをはべらせ、持っていた金をあらかた使い切ってしまった様子であった。


で、帰りもタクシーに乗り込み、蓮華の家に戻ると深夜にも拘らず彼女を呼び出して、


「タクシー代、払ってやれ」


と実に横柄な態度で彼女にタクシー代を払わせた。


蓮華はそれに逆らうこともなく、素直に払う。


こうして帰った健雅は風呂にも入らず、そのままリビングのソファーにごろりと横になって眠ってしまった。


「……」


赤い顔で鼾をかいて寝る健雅にまた毛布を掛けてやり、蓮華は黙ってこのどうしようもない男を見下ろす。


出所二日目でこの有様だ。いや、出所したてだから開放感に酔っているというのもあるのかもしれないにしても、少なくとも真人間になろうとしている者の姿とは思えない。


事実、健雅にはそんなつもりなど毛頭なかったが。


とにかく金づるが自分から舞い込んできたということで、とことんしゃぶりつくすつもりなのだろう。


蓮華もそれは承知している。


すると彼女は、家の外に出て、そろそろ今日の監視を終了しようとしていた探偵二人の下に行き、


「ご苦労様。これで何かあったかいものでも食べて」


と、それぞれに五千円を手渡した。併せて、もう一人の探偵の分も預ける。


「あ、ありがとうございます…!」


思わぬ心づけに探偵達は恐縮して深々と頭を下げた。ちゃんと事務所からも給料が出るはずなので必要はなかったものの、蓮華の気持ちとして出したかったのだ。


今後も監視を続けてもらうことになるが故に。



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