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楽をするためなら

『人間は、楽をするためならどんな詭弁でも怪しい説でも受け入れてしまう』


そういう話がある。


<ストレス耐性>や<体罰の効果>がまさにそれだろう。それらは、指導する側が楽をしたいがための<嘘>だ。


ストレス耐性を付けるためにストレスを掛けるなど、実に分かり易い詭弁である。


なぜならその話は、相手がそれまでにどれだけのストレスを受けてきたのか、また現時点でどれだけのストレスを受けているのかを一切考慮していないのだから。


単に、指導する側が、ストレスを掛けるような安易な手段を取っている事実を正当化したいがために言っているに過ぎない。


ストレス耐性なるものを養うためだというのであれば、対象がそれまでに受けてきたストレスを徹底的に調べて解析し、その上でどれだけの負荷を掛けるのが適当であるかを綿密に計算する必要があるはずだが、<ストレス耐性>なる言葉を使っている者の中でそれだけの手間を掛けて丁寧に行っている者が果たしてどのくらいいるというのだろう?


スポーツのトレーニングでさえ、実際のトレーニング以外で必要以上の負荷を掛けてオーバーワークにならないように管理するのが当然のはずである。


にも拘らず、<ストレス耐性>なるものではそれが考慮されるという話はまず聞かない。


虐待を受けてきた子供、親や家族を病気や事故や事件で失った子供が感じてきたストレスを計算に入れた上でストレス耐性を付けるための指導を行っているという話など、聞いたことがあるだろうか?


これは、体罰でも同じである。


『殴られる痛みを教えるために体罰を行う』


など、詭弁以外の何物でもない。何しろ、問題行動を起こす児童の中には、かなりの割合で親をはじめとした大人から暴力を受けてきた事例が含まれているのだから。


すでに<殴られる痛み>を知っている相手を殴ることで教えられる痛みとはなんだ?


そんなものが本当にあると立証する手間を掛けずにただ殴ればいいなど、


『面倒くさいことはしたくない。手っ取り早く殴って、<指導しているというアリバイ>が作りたい』


という甘え以外のなんだというのか?


『すでに殴られる痛みを知っている相手に改めて殴られる痛みを教えるにはどのような方法が適切なのか徹底的に調べる』


という手間を省いて楽がしたいだけではないのか?


加えて、子供が、暴行、傷害、強要、恐喝、窃盗等の犯罪行為を行った時に体罰を加えることでそれをなかったことにする例にいたっては、


『警察沙汰という面倒なことになるのを、体罰を加えたことで回避したい』


などという、下手をすれば犯罪の隠蔽行為にも当たるものではないのか?


だから蓮華は泰心(たいしん)を殴らないし、灯安良(てぃあら)を殴ったり怒鳴ったりさせない。


手間を掛けて、本人にとって最も効果のある対処法を探っていくのである。



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