勉強の日々が
灯安良が無事に出産できたのは、彼女が小学生としては発育が良く、一見しただけなら小柄な成人女性にも見えるほどの体格をしていたからというのもあったのかもしれない。
とは言え、これは女性や、女児を持つ親なら実感があるかもしれないが、未成熟な女児と、いくら小柄であっても第二次性徴を終えた成人女性とでは決定的な違いがある。
それは、<腰>だ。たとえば、サイズが<身長百六十センチ>と表記されているボトムでも、女児用のものでは身長百六十センチの成人女性だと腰周りが窮屈だったり、そもそも入らなかったりするのだ。
太ったからではない。骨盤の発育の差だ。
この点で灯安良はまだ未熟であり、故に大変苦労することになった。
灯安良は言う。
「赤ちゃんが出て行く時、腰が爆発したかと思った。バキッッ!ってすごい音がしたんだ」
それは実際に音が出たというよりは、あくまで彼女がそう感じたというだけのことである。幼い彼女の骨盤が出産の負担に悲鳴を上げたということなのだろう。
いくらセックスそのものは大人のようにできたとしても、女児の体は出産にはそもそも不向きなのだ。それでなくても人間という生き物の体自体が出産を大変なものにしているというのに。
その辺りをわきまえないといけない。
とは言え、幸い、灯安良は無事に赤ん坊を出産することができた。
なお、<小学生の出産>などといういかにも週刊誌当りが喜びそうなネタではあったが、もえぎ園ではその辺りで徹底的な対策が取られ、漏れないようにしていた。彼女が通う小学校としてもそのようなことが漏れてマスコミの取材攻勢を受けては敵わないと協力を惜しまなかった。
また、灯安良が部屋に引きこもったことも、結果として外部に彼女の妊娠を悟られないようにする効果を発揮したのだろう。彼女を無理矢理引っ張り出さなかったのは、そういう配慮も含んでのことだった。
それもあり、マスコミに煩わされることなく出産にこぎつけることができたのである。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
事ここに至ってなお大人に対する不信感が拭えなかった灯安良は謝罪も感謝もしなかったものの、代わりに阿礼が何度も頭を下げた。
そんな阿礼に対して、宿角蓮華は、
「そこまで徹底的にできたら大したものよ」
と、感心した様子さえ見せた。
灯安良と阿礼はこれから、親になるべく勉強の日々が待っている。数ヶ月の間、学校を<病欠>していた灯安良の学校の勉強はもちろんのこと、親として子供とどう接するかということを学んでもらわないといけないのだから。




