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相手の所為に

大人はとにかく難癖のようにして他人に責任をなすりつける。自分が悪くても間違っていてもそれを認めようとしないものも多い。自身のやり方が適切じゃないから上手くいかないのに、それを相手の所為にして、


『自分はこんなに頑張ってるのに!』


と被害者面をしたりする。


大人のそういう振る舞いを子供も見ていて、だから自分の過ちを認めずに言い訳や嘘を並べて誤魔化そうとしたりするというのに。大人の真似をしているだけだというのに。


それなのに、子供のすることを一方的に責めるのだ。自分達が間違った手本を見せてしまっていて、それを真似たら、


『言い訳をするな!』


『嘘を吐くな!』


と責めるのである。


そして、その原因が自分達にあることを認めようとしない。子供は大人のそういうところこそを見倣って真似るというのに。


子供が問題を起こす時には、まず、身近な大人こそを調べるべきなのだろう。


『僕達の所為にするためですか?』


阿礼(あれい)の問い掛けは、まさにそこを突いてきていた。


中性的で物腰が柔らかく、自ら主体的に行動するというよりは周囲に流されて動くように見える阿礼(あれい)だが、実際にはとても周囲をよく見ていて、特に大人の言動をよく見ていて、そして痛いところを的確に突いてくる。


だが、今のもえぎ園に、それで狼狽えたり逆上したりする職員はいない。特に、園出身の職員達はそうだ。かつて自分がそうだったから。自分がそうやって大人の<裏>を見透かしてそこを突いてきたから、何をしてくるかがだいたい分かるのである。そして、分かるからこそ職員になったのだ。


そんな園出身の職員でさえ阿礼(あれい)の問い掛けには舌を巻いた。小学生とは思えないくらいに敏い少年だ。そして、自分を省みることのできないタイプの大人にとっては<嫌な子供>だろう。


しかし、阿礼(あれい)に問い掛けられた女性職員は慌てなかった。もう少し年齢が上なら、こういう物言いをする子供も珍しくないからだ。


彼女は答える。


「そうですね。私達がどれほど言葉を並べても、あなた達がそう受け取ることもあることは承知してします。そうならないように、そう思われないように私達も努力はしますが、必要とあれば、たとえあなた達に恨まれようとも、必要な対処はします。


ですが、それはあくまでも最後の手段。基本的にはあなた達のしたことはあなた達自身で責任を負っていただくのが原則です。今回の場合は、生まれてくる赤ちゃんの親として役目を果たせるようにあなた達にはなっていただきます。


赤ちゃんを奪われたくないのであれば、奪われないような親になってください。それが唯一の方法です」



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