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相応の報い

灯安良(てぃあら)は、周囲に対して<壁>を作っていた。小学生である自分が子供を生もうとしていることに他人は理解などすることがなく、表面上は理解を示しているような態度を取っている者もそれによって懐柔して結局はお腹の子を殺そうとしているのだと、疑心暗鬼に陥っていた。


もっともそれは、<マタニティブルー>と呼ばれるものだったのかもしれないが。


マタニティブルーと呼ばれるものについても、世間の理解は必ずしも進んでいるとは言えないだろう。


『甘えてる!』だの、


『妊娠は病気じゃないのに自分を特別扱いしてもらおうとしてる』だの、


およそ僻みとしか思えない声が溢れている。


宿角(すくすみ)蓮華(れんげ)は言う。


「結局、そういうことを言う人間は、自分こそが気遣ってもらいたいと思ってるんでしょうね。自分こそを救ってほしいと思ってるのよ。なのに自分以外ばかりが気遣ってもらえることに僻んでいるだけ。


それ以外の理由ってある? 自分以外の誰かが気遣われることに難癖つけなきゃいけない理由が。


そりゃ、あれこれ理屈を上げるでしょうけど、そんなもの、どう言い訳並べたってただの屁理屈よ。突き詰めれば僻み以外の何ものでもない。


確かに、優遇してもらえるとなればそれに便乗しようとする厚かましい奴もいるでしょうよ。けどね、そんな輩は個別に対処すれば済む話。そういうのを理由に必要な気遣いをしなくていいという理由にはならない。


私は子供が生めない体だけど、だからって妊娠してる女性を気遣うのをバカバカしいとか甘やかしてるとか思わない。


妊婦を気遣うってのはね、それはつまり、自分の力じゃ自分を守ることさえできない胎児を気遣い守るという意味でもあんのよ。それをなにとち狂ったのか、『妊娠したからって甘えんな!』とかホザく痴れ者がいる。お前は母親の胎の中にいる胎児相手になにをイキがってんの!?って話よね。


お前らが将来受け取ることになる年金の原資を負担してくれるのは、これから生まれてくる子供達だって分かってんの? 公的年金は国が運営してるものだから無くなることはないとしても、年金保険料を支払ってくれる人間が減れば、当然、支払われる年金の額を減らすしかなくなるでしょうが。実際、減ってきてるしね。


『一生独身でいて、子供とかに使う金を貯めて残しておけばいいだろ』


だって? 笑止! 『稼ぎが少ないから結婚できない』とか言ってる連中にそんな蓄えが作れるはずがないでしょうが! 現に、『子供とかに使う金を自分の楽しみに使えるから~』とか言って散財してるでしょうが。それで十分な蓄えを作る? それで十分な蓄えが作れるなら、『稼ぎが少ないから結婚できない』なんてのは嘘ってことよね?


子供は要らない、作りたくないってのなら勝手にするがいいわ。でもね、それで子供を持とうとする人間に難癖つけるなら相応の報いが返ってくるのは当然でしょうが」



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