求め合う二人
式弥灯安良と門枚阿礼は同じ小学校に通う六年生の児童である。
灯安良が五年生の時に今の小学校に転校してきて阿礼と同級生になったことで知り合った。
二人は、互いに初めて相手を見た時からなぜか惹かれ合うものを感じ、すぐに仲良くなった。
灯安良は、一見すると小学生に見えないくらいに背も高く発育が良く、いつも中学生や高校生に間違われた。それに合わせてか、髪もブローし、やや色を抜き明るい髪色にしてる。
学校からは当然、そういう点について指導はあるものの、彼女は、
「地毛ですから」
と言い張って聞き入れようとしなかった。
なので、要注意児童と学校からは見做されていた。
一方、阿礼の方は、体は決して大きくないもののすらりとした印象の線の細い児童で、髪も長めなことからいつも女児と間違われる少年だった。
それまで目立った問題行動はなかったものの、他人と打ち解けようとせず、いつも孤立していることを学校側は案じていた。
そんな二人が出逢い、惹かれ合ったのだ。
灯安良は言う。
「私、人間は誰も信じられなかった。でも、不思議…あなただけは信じてもいいって気がしてる」
阿礼は応える。
「僕もだよ。人間は汚い。でも、灯安良だけはキレイだ……」
とても小学生とは思えないそんな言葉を交わし、二人は放課後の誰もいない教室で、まるでそうするのが当然とでもいうかのように唇を重ねた。
体の大きな灯安良の方が阿礼をリードしているようにも見える。
二人の関係は秘密ではあったものの、いつも一緒にいることから、当然、生徒達の間では、はみ出し者同士のカップルとして周知の事実だったようだ。
ただ、学校側としては、注視はしているものの互いに友達ができたということであればまずは一安心と見守ることにしたのだった。
だがそれは、物事を自分に都合よく解釈して見る、大人の悪い癖でもあっただろう。
だから二人の本当の関係を見抜くことができなかったのだ。
二人は、六年生に進級した直後から、体の関係もあったのである。
灯安良と阿礼にとってそれは自然な成り行きだったのかもしれない。大人をはじめとして人間のすべてを信じることができず、そんな中で唯一現れた信じられる相手。そんな二人がお互いに依存するのは何も不思議なことではなかった。
しかも灯安良の両親も阿礼の両親も、自分の子供が何をしていようとも関心がなかったのである。
実の親にも必要とされなかった二人は、自分達だけで新しい<家族>を作ろうとしたのだ。




