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援助交際

「ああ、駄目。全滅よ。ま、次に期待するしかないわね」


二十組の養親希望者の資料に目を通し、宿角蓮華すくすみれんげは忌々しそうに言った。


「しばらくはうちで預かることになるわね。まあいいわ」


そう言った時、園長の机の電話のランプが点滅した。着信だ。石田葵いしだあおい(仮)がいるので着信音は切ってある。


「はい、<もえぎ園>園長、宿角です>


受話器を取って淡々とそう応える蓮華の顔が、フッと厳しいものになる。


「…そう、分かったわ。じゃあいつもの通りに…」


冷徹な口ぶりでそう告げて受話器を置いた蓮華の顔が悲しそうに見えたのは、気の所為なのだろうか。


「また、赤ん坊が来ることになりそうね。今度はJKだって。援助交際の相手の子供を妊娠したらしいわ。堕胎おろす為の金策をしてるうちに期限が過ぎてどうしようもなくなったってさ。


…ほんとバカ。救いようがないわね。でも、生まれてくる子に親の業なんて関係ない。生きてもらうわよ」


厳しい目で、どこを見るでもなく誰に語るでもなく、蓮華は自分に言い聞かせるようにそう言ったのだった。




それの少し前、一人の女子高生が、藁にも縋る思いで電話を掛けていた。ネットを見ている時に見付けた怪しいサイトだったが、そこに書かれた『要らない赤ちゃん引き取ります』の一文に目が釘付けになり、つい電話を掛けてしまっていた。


電話の相手は若そうな女性で、まるでコールセンターのように馬鹿丁寧で淡々としていて、胡散臭さを感じさせなかった。それで思わず安心してしまったが、電話を切ってからまたあれこれ考えてしまった。


『なんかこれ、ヤバいんじゃない…?』


そう思っても今更どうしようもない。それに、腹の中の<あれ>は確実に大きくなってきている。


初めは、小遣い欲しさからだった。<友達>と遊ぶのにはとにかく金が要る。携帯代、化粧品代、洋服代、飲食代、カラオケ代、プリ代。いくらあっても足りない。だからといってそれをケチればすぐに仲間外れハブにされる。それは嫌だ。親は自分のことなんて関心持ってないし、友達と一緒にいる時だけが生きてる気がする。ハブられるくらいなら死んだ方がマシ。


だから、援助サポしてくれる相手を探した。バージンが五万で売れたことで、後ろめたさとか悪いことしてるのかもっていうのは綺麗に吹っ飛んだ。思ってたほどは痛くもなかった。気持ち良くもなかったけど。


それからはアルバイトよりも気楽にやれた。ただベッドに横になってればいいだけだった。そういうことをすれば子供ができるかもというのは知ってたけど、みんな、


『そんなの滅多にできないって。今の男はダイオなんとかっていうので<種>が減ってるし、できたら堕胎おろせばいいじゃん。黙ってやってくれるとこあるってさ』


って言ってくれた。


それなのに……。


それなのに、どうして自分だけ……。



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