6 朝食
「律くん起きて!」
「朝だよ律くん!」
ライとコウの声にも律は起きることはなかった。
「律く~ん!」
「どけ。全く、ガキが……」
狼は文句を言いつつ律の布団を剥いだ。
「おい、朝だぞ。起きろ」
「ん~……まだ眠い~」
「いいから起きろって。朝ごはんなしになるぞ?」
「やだぁ……。起きる……」
「よし」
料理から何からこなす狼の姿に動物たちは口を揃えた。
「やっぱりお母さんだね!」
「みんなのお母さんだ!」
「いい加減にしろよ、次言ったやつ飯抜くぞ」
「は、はい……」
狼の本気のトーンに動物たちは戦いた。
「ママなの?」
「はぁ!?」
狼が振り向くとそこにいたのは律だった。
「律!? 俺はママじゃねぇよ」
「じゃあパパ?」
「――どっちかっていえばな」
「パパかぁ……」
「ほら、そろそろできるから座っとけ」
「うん!」
律が来てからというもの、この家は押さない律に合わせ、机は低く、食事は椅子ではなく座布団に座って食べる方式に変わった。
もちろん、食事だって同じである。律の嫌いなピーマンや茄子、玉ねぎなどは使わず、鶏肉や甘いものなどを多く作るように変わった。
「ほら、食え」
「わぁ~! 美味しそうだね!」
「俺の料理は絶品だからな」
「ありがとう! いただきます!」
食べ始めた律はふと気付いた。
「動物さんたちは食べないの?」
「僕たちは食べなくて平気なのさ! 君はたっぷり食べていいんだよ!」
「――ん!」
律は狼の作った料理を持ち上げ、そのまま狼に差し出した。
「は?」
「狼さんも食べて!」
「何で俺が!?」
「僕だけは、寂しい……」
(そういえばこいつ、生前は両親が共働きでずっと1人だったって言ってたな)
「狼さん?」
「わかったよ。食えばいいんだろ?」
狼が食べるところを見た律はここに来て一番いい笑顔を浮かべた。




