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3 看病

 時は過ぎ、舞彩がこの森に住み始めて8年が経とうとしていた。見た目もやることも何も変わらず、朝には長い髪をツインテールに結び、手紙を書き続け、夜にはツインテールを解き、寝る。

 そんな生活を8年も続けていたある日、舞彩は初めて高熱を出し寝込んだのだ。


「大丈夫?」


 舞彩にオコジョのコウが声をかける。


「うん……」


 ぼーっとする思考の中、舞彩は応えた。

 家の中では狼がお粥の材料を取りに、オコジョたちはみんなでタオルを濡らし、舞彩の額に乗せ、狐や鹿は舞彩の上に毛布を乗せていた。


 みんなが寝始めたころ、狼は枕元にお粥を置き、呟いた。


「大丈夫……。あんたは強い子、このまま成仏したりはしない……」


 そう、いくら亡くなっているとは言っても、風邪は大敵である。ここの家では幽霊であっても実体化し、触れることができる。

 しかし、それは涙を流さなければ、という条件つきだ。ここで、いかなる理由でも涙を流せば、即座に、強制的に成仏されるのだ。


「――狼、くん?」


 突然呼ばれた狼はバッと顔を上げた。


「大丈夫か?」

「うん。少しよくなったよ~。みんなの看病のお陰だね」


 微笑む舞彩の笑顔はいつもよりふわふわとした雰囲気を纏っていた。


(消えてしまいそうだ……。こんな小さい体で、一体どんな思いを隠しているというのだ……)


「舞彩」

「――狼くん?」

「無理はするなよ……? おかゆ、食えそうか?」

「うん。食べようかな~」

「温めてくるから、待ってろ」


 そっけない言葉とは裏腹に優しい手付きで舞彩の頭を撫で、お粥を持ち、キッチンへと向かった。


(狼くん、何か、いつもより優しい……)


「――ありがとうね、狼くん」


 ほかほかのお粥を持ち、戻ってきた狼は驚いた。


「何だよいきなり」

「ふふ、狼くん、王子様に似てるんだ。優しくて、でも時々意地悪で、かっこいいの」

「そうか、ほら、起きれるか?」

「うん」

「1人で食えるか?」

「大丈夫だよ~」


 そうしてたくさんの動物たちの看病のお陰で舞彩は回復したのだった。

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