1 名前
そんな出会いから1ヶ月が経ち、舞彩はやっとこの状況に慣れ始めていた。
「ねぇ、そろそろ貴方達の名前を教えてくれてもいいんじゃない?」
舞彩は5匹のオコジョたちを前に、尋ねていた。
「僕達の名前?」
「気になるの?」
「必要ないよ」
「言う必要はないですが?」
「まあまあいいじゃん」
どうやら、口々に話し始めるオコジョたちは一向に教えるつもりはないらしい。
「教えてくれてもいいじゃない! このままだったら、何て呼んだらいいのかわからないわ……」
「君の好きなように呼んでくれてかまわない」
「何か好きなものを当てはめて呼んでくれた人もいたね~」
「好きなもの?」
「そう。つまりは適当に呼んでくれ、ってことだ」
「わかった!」
そう言うと舞彩は机に向かい、なにやら作業を始めた。
――10分後
「できたぁ!」
「何ができたの?」
わらわらと舞彩の周りに動物達が集まり始めた。
「はい。君は明るいからライくん! 君はマイペースだからノンくん! そっちの君は凛としてるからリンくん! こっちの君は大人びてるからヨリくん! そして君は人懐っこいからコウくん! どうかな……?」
舞彩は即席の名札を作り、それぞれのオコジョの首から提げた。
「わぁ~! 名前だぁ~!」
「どうもなにも、好きに呼んでくれたらいい」
「じゃあこれからその名前で呼ぶね!」
舞彩は満面の笑みを浮かべ、オコジョたちを見つめた。
「――いいから、王子様とやらに手紙書きなよ」
照れたような口調でリンが言った。
「うん! いくらでも書いちゃうよぉ~!」
ニコニコと上機嫌な舞彩はペンを走らせた。




