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一回目 刺殺

前よりは長い程度。



真っ赤な服で家へ向かう。ベタついて動きづらい。とにかく服を着替えたかった。

僕の家は山に近く、有名な樹海の外れにある。

「ただいま。」

声はない。誰もいないのだから。家族はみな死んでしまった。僕と違って生き返ることもない。




「ただいま!」

あの日は雨だった。当時中学生だった僕は、走って家に帰った。きっと本が読みたいとかゲームがしたいとか、そんな理由だっただろう。外からは、家の中で何が起こっていたのかわからなかったと思う。その辺の記憶は曖昧だ。


まず目に入ったのは赤。

床は赤の水玉模様。壁紙も目に痛い色になっていた。趣味の悪い模様替えのも程がある。当然そんな軽口を叩いている余裕は無かった。じゃあ悲鳴をあげたのかというと、それもない。

よくドラマでは死体を見た人が悲鳴をあげるが、あれは嘘だ。いや、もしかしたらそうなのかも知れないが、僕は違った。実際は声なんてでない。父と母、二人の死体があるのにも関わらずだ。

一人っ子のご多分に漏れず、僕は甘やかされて育った。そんな子供にこんな現実が受け入れられるはずもなく。僕はひたすら自分の頬をつねり、夢から覚めようとした。


いつまで頬を痛めつけていただろうか。気がつくと、真っ赤な包丁を持った黒服がいた。ずいぶんと背が低く、僕とあまり変わらない。返り血こそついていなかったものの、ソレが親を殺したことはすぐに理解できた。そこまで考えたところで、僕の意識が途切れる。


目が覚めると僕は手を握られていた。握っていたのは池田香織。池田は僕が起きたと知るとすぐに手を離し医者を呼びにいった。一方僕は自分のおかれた状況を受け入れたくなくて、泣いていた。伏見文也初めての入院だった。

医者が来たあと、池田は家に帰らされた。どうやら僕が意識を失ってから3日が経っており、その間毎日来てくれていたらしい。逆にいえば他には誰も来なかった。

「君は人かね。」

医者は開口一番そんなことを聞いてきた。

「_何を言っているんですか?」

そう答えるしかなかった。涙声で。そもそも声になっていたのかも怪しい。

「お父さん、お母さんのことは残念だったね。」

普通順番が逆だろ。というか普通は君は人か?なんて質問はしない。もう訳がわからなかった。

「殺されたんですか?どうして?誰に?」

「君の両親は6月10日午後4時頃に殺された。死因は背中から包丁で一突き。出血多量による。その後犯人は家に隠れ、一人息子である君を狙った。そうして一時間後、帰ってきた君を刺し殺した。犯人は全身黒服、客人として家に入ったところが向かいの家の防犯カメラに残っていた。犯人はまだ捕まっていない。もういい?」

正直ほとんど理解できなかった。何よりも両親が殺されたことなど理解したくもない。

ただ、ひとつだけ気になることがあった。

「僕は生きてますけど。」

今度は声になった。長々と喋るから間違えるんだ。もしかして両親も実は生きているのでは?しかしそんな淡い希望も泡のように消えることになった。

「いや、みんな死んだよ。正確には【一度】ね。そして君だけ生き返ったんだよ。」


……は?

こんなものを読んでくださりありがとうございます。

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