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死神ラン  作者: ひまなお
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三話「予想外」

【第三話】




・・・今考えられることといえば、自分の部屋の天井がタバコのヤニで黄ばんできたな・・・と、いうことだった・・・


ベットに上向きに横になり、心ここにあらず・・・と、言った感じであろうか?


両腕の手の平を後頭部の枕代わりにしながら、一度横に寝返りをした。

考えなければならないことは山ほどあるのだが、何も考える気がしなかった・・・。

今日少女が言っていたこと「遣り残したことを4つ今日中に考えておけ」・・・。

今でも信じられないがどうやら現実のようだ。

守は頭を切り替え考えた。

4つの願いを何にしようかと・・・。

しかし、これを考えると自分が死ぬのだということを実感してしまう。

それにより毎回頭痛が走る。


「・・・・・・・・・・・・・・」


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・


「は!」


いつのまにか寝てしまったのだろうか?


疲れの残った重たい体をベットから無理矢理立ち上げ、窓に向かう。

カーテンを開けたら朝だった。

窓からもれる太陽の光がなんとも心地良い。それと同時に昨日のことを思い出す。

昨日のはやはり夢だったのであろうか?

自分の体を調べてみるがやはり何とも無い。

守は「今見たのは夢なんだ」と自分に思い込ませ、軽く朝食をとり学校へ向かった。


学校でも別に変わった様子はなかった。屋上にも行ってみたがやはりなんともなかった。


「夢・・・だったんだよな。」


授業も全て終わり、帰路につく。

家に帰るなり守は自分のベットに横たわり、時計をじっと見る。


午後11時・・・もう少しで「今日」は終わる。

もしもあれが夢であったのならば彼女は「今日」現れないはずだ。

彼女は昨日「今日中に考えておけ」と、言っていた。

その言葉から普通に考えれば、彼女は今日また現れるはずである・・・。

しかし、もしも今日中に彼女が現れなければ・・・あの現実ではありえないことは夢であったと思いこむことができそうだ。そんなわずかな希望を残し、時間が過ぎていくのを待った。

時計は無情に時間を刻んで行き・・・ついに「今日」が終わる5分前となった。

ほんのわずかだが・・・安堵の息が漏れた。


「ああ・・・やっぱ夢だったんだよな・・・。」


そう口走った瞬間!彼女は現れた!またも何もない空間がゆがみ、彼女がそこから出てきたのである。

その一連のことは、事情を何も知らない者にとっては神秘的にもとらえられるであろう。

が・・・事情を知ってしまっている守にはそんなことを考える余裕は無かった。

横たわったままの体は動かず固まり、首から上だけを彼女へと向ける。


「・・・遣り残したことは考えたか?」


守へと目線をやり、またも無表情で言い放つ少女。

守は夢だと思っていた分、普段の倍驚いた。


「あ・・・ああ・・・」


実際考えてなかったか反射的にイエスと答えてしまう。


「ならば早く言え。」


守はひとまず自分を落ち着かせることに努力し、寝ていた体をおこしベットに腰をかける。

そして少女に問いかけた。


「俺は・・・俺はいつ殺されるんだ・・・?」


「三日後だ」


彼女はためらいもなく瞬時に答えた。


「もしも・・・もしも願いで伸ばせるとしたら何日なんだ・・・?」


「・・・一週間って所だろう。」


少し・・・願いで「殺さないでくれ」と言えば大丈夫でないかと期待してしまった自分がいた。


「じゃぁ・・・じゃぁまずはあと一週間殺すのは待ってくれ!」


「・・・いいだろう。」


そう彼女は言うと目を閉じ、微かな光を体から発しだす。

光の粒が体を包み込むように彼女の周囲に集まり、風も無いのに服や髪がザワザワと揺れ動く。

約3秒後、彼女を覆っていた光の粒が優しく消え去り、ゆっくりと目を開けると「了承した。」と、彼女は答えた。


「次はなんだ?」


間髪入れずに、再度守に問いかける。

何も考えてなかった守は焦った。願いを何にしようかと・・・。

守の考えた結論はこれだった”どうせなら自分が信頼でき、好意を持てる人物と一緒に一週間いたい”だった。


この状況にこの考えはおかしいと常人は思うと思うが、家族・友人すべてを受け入れていない守にとってはかなり真面目な願いなのかもしれない・・・。

一緒にいて安心し、そして自分が心から許せる存在が欲しかったのだ。

そう、守には自分が心から許せることが出来る人物がいなかったのだ。

もちろん親も例外ではなかった。


しかし、別に守にはこれと言って好きな女性などいない。

それでも守は一応彼女に言ってみた。


「あと一週間・・・僕が心を許せる人と・・・いたい・・・。」


自分で言ってて頭がおかしいのじゃないのかと疑ってしまう。


「いいだろう。お前が好意を持っているのは誰だ?言ってみろ。」


やはり予想通りの返事が返って来た。

守は必死に考えたが、やはりこれと言って好きな女性はいない。

そして守が心を許せそうな人物もいない。

かと言って、知って居る人物が守の「好意をよせれる相手」だったのであれば

守自信「死にたい」などとは言わなかったであろう。

・・・そうなると守が多少でも好意、尊敬などといったことを思う人物、と言うことになる。

しかし、守には「尊敬している人物」や「好意を寄せている異性」などという人物はいない。

守も少女の問に答えようと、出来る限り自分の脳をフル回転させたがこればかりは・・・。


ふと顔を上げ、少女の顔を見た守は普通では考えられないことを・・・考えてしまった。

そう・・・まさに自分を殺さんとする女性・・・今目の前にいる死神・・・と、言うべきであろうか?

頭が混乱していたせいであろうか?それとも自分の頭が狂ってしまったのであろうか?

いや・・・もしかしたら彼女の無表情、そして何も迷わずに守を殺そうとしたその態度に、人間ならば確実にある「裏の顔」が見られないと思ったからであろうか・・・。

守はその時みた窓から零れる月明かりの下の彼女を、心底”綺麗だ”と思ってしまった。

普段の守ならばこの自分の普通ありえない思考に一度また考えてしまっているところだろうが、今の守にはそんな余裕は無かった。

彼女がもしかしたら・・・自分が今現在心から存在を許せる人物なのではないだろうか・・・?


 このとき、守自信も気がついていなかったであろうが・・・。

 守はこの少女に「一目惚れ」をしていたのかもしれない・・・。


「・・・その相手は・・・この世の人じゃなくてもいいのか?」


「すでに死んでしまっている者・・・と、言うことか?別にかまわぬ。お前にだけに見えるようにしてこの世にもう一度降りて来てもらう。」


「・・・じゃぁ・・・別にあの世の人でもいいんだよな・・・?」


「そういうことだ」


そして少し間を空け、少女の顔を見つめ恐る恐る答えた。


「・・・君・・・でもいいん・・・だよな・・・?」


さすがにこの返答に彼女は初めて驚いた顔を見せた。それがまた普段とちがって可愛らしく見える。しかし、すぐにもとの無表情に戻るとこう言った。


「その願いは過去に前例が無いな・・・少し待て。」


そう言うと彼女はまた目を閉じ、微かな光を体から発せた。

さきほども見せられた行動だが、何から何まで神秘的であった。


「上が了承を出した・・・よって・・・承諾する・・・ことになった。」


彼女はやはり無表情だったが自分が好意の対象に選ばれるなど考えてもいなかったのであろう。

やはり少し驚いたような口調であった。

そしてまたいつもの淡々とした口調に戻ると守に問いかける。


「ほかの願いはなんだ?」


守は他の願いは今は考え付かなかった。

それでも少し考え、少女に答えた。


「あとの願いは・・・あと一週間のうちに言うよ・・・」


「・・・いいだろう。」


そう言うと彼女はまた消えてしまった。

後には、暗く無音になった部屋に守一人だけが取り残されている。

それと同時に激しい眠気に襲われる守、その日、守は人生で初めてかもしれないくらいの深い眠りに入った・・・


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