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死神ラン  作者: ひまなお
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十二話「知る者」

背後から自分に対して上げられたであろう女性の声に対し、迅速に上半身だけを半回転させた。


振り返った先に眼球に飛び込んで来たものは・・・先ほど屋上へと進入した際に目に付いた、長い黒髪の女生徒であろうか。

つい先ほどは後ろ姿だけで顔を見ることは適わなかったが、今は守の方向に注目しているためハッキリと拝むことが出来る。

その顔立ちは、整ってはいるが少々キツイ目をしていると言うことが第一印象であった。

その綺麗に整った顔つきと、背が高いのもあるせいか少し威圧感すら感じられる。

小さいとも大きいともとれぬつり上がった漆黒の瞳、鼻が高く唇もうっすらと輝いて見える。何処かのお嬢様・・・と、いう印象だろうか?

その人物は腕を組、足をそろえ背筋をピンと伸ばし守に注目していた。


「俺・・・ですか?」


「この屋上に私とあなた以外誰が居るの?」


一応確認のために放った質問であったが、彼女はそれに対し表情も変えず、そして呆れたように言い返して来た。


「何か用事でも?」


「興味があってね。今日はいつも一緒にいるおチビさんはご一緒じゃないのですね。」


おチビさんとはランのことだろう。

たしかに学内に居る間・・・いや、24時間ほぼ隣り合わせで生活を共にしていたので、周りの目に止まるのも無理は無いであろう。

しかし、今の守にとってランのことを会話に出されるのはあまり気分の良いものではない。

目の前の彼女に対し、少々ぶっきらぼうに言葉を返した。


「別に・・・いつも一緒ってわけじゃないですよ。」


「・・・・そう。」


現在顔を合わせずらい・・・などとは他人には言えるはずもなく、何事も無いような口調で軽く受け流す。

しかし、そんな守の意思とは反比例し黒髪の彼女はさらに深く質問をして来た。


「あなた達、今同じ家に一緒に住んでいるんですってね。」


さすがにここまで深く自分の近辺状況に干渉されると、他人とつねに一定の距離を置いている守にとっては不快に感じて来てしまう。

頭では平然を装っていても、顔面の眉間にはシワが寄せ集まっていた。


「・・・その質問に俺が答える必要があるんですか?」


イライラしていることもあり、投げやりに答えた。

それと同時に相手にも距離を取らせるような・・・そんな発音で。


「図星ですか・・・信じられないことをしているのですね。」


が、彼女は守の言葉に何ら動じることもなく、薄ら笑いで口を開いてきた。

動物園の猿を見るような、そんな表情を浮かべて。

言い換えるならば、人を小馬鹿にしたような・・・そんな態度である。

なんだこいつは。と思いつつ、自分の前に立つ女に苛立ちを感じながらも静かに相手に言葉を投げ返した。


「・・・用が無いのでしたら行ってくれませんか?」


またも威圧的に投げつけたその言葉に対しても、薄ら笑いを浮かべて来る。

グーの形に握られた片手を唇の方へと移動させ、体を小刻みに動かしながらクスクスとせせら笑っている彼女。

そしてそれも落ち着き、口を開いた。


「そうね・・・そろそろ授業も始まる時間ですしね。」


会話の終了の合図のような口調で一言だけ発すると、守と向かい合わせの形をとっていた体を反転させ、そして再度首から上を横顔だけ相手に見えるよう守へと向ける。


「まさか死神と一緒に暮らしている人間がいるなんてね。」


「!?」


聞き逃してしまいそうな小さな音量で一言を放つと、彼女は完全に背を向けてしまい、出口へと足を前へ出した。

が、さすがにランの正体を知っている人間が自分以外に居るのはおかしい。

この発言には守も無視しているわけにはいかなかった。


「ちょ・・・ちょっと待てよ!!」


慌てて駆け出し、出口へと足を動かしている彼女を追い、背後から手首を乱暴に掴み取り動きを停止させる。

そして先ほどよりも音量を上げ、少々雑に言葉を口に出した。


「なんでお前ランのこ・・・」


「私に触るな!!!!」


掴んだ瞬間、そして守が話かけた瞬間に、今までの人を馬鹿にしているような落ち着いた言語ではなく、暴力的で、かつ拒絶的な女の声が守に向かって衝撃波をぶつけて来た。

そして勢いよく腕と体を左右に振り回し、遠心力の力を使い守の手を無理矢理はがしてしまった。


「な・・・!?」


何が起こったのかと思わず立ちすくしてしまう。

そんな守を、完全に自分の敵として見ている細くつり上がった瞳で睨みつけてきた。

が、それも守の姿を確認するとまた先ほどのような人を小馬鹿にしたような表情へと戻っていった。


「ふ・・・行けと言ったのはあなたでしょう?その慌てたような表情・・・く・・・滑稽(こっけい)ですね」


今度は守にもハッキリとわかるような、完全に人を馬鹿にした言動で言葉を放って来た。

そして再度、その場で凝固している守に背を向け出口へと向かいだす彼女。

それを確認し、ハッといった表情で慌てて声を張り上げる。


「ちょ・・・ちょっと待てってば!なんでお前ランのこと知ってんだよ!」


 キーンコーン、カーンコーン


口を動かしたわずか2秒後に授業開始合図の大音量が学校中に流れる。

女は守の言葉に微動だにもせず、一定の速度で足を上下に進めてゆき、出口の扉を閉めてしまった。


「ちっ!!」


さすがにそれを放ってはおけない。

大きく舌打ちをかまし、凝固した体を無理矢理に前へと進め、閉められた扉へと俊敏に足を動かす。

そして、普段の三倍ほどの力を使い、ドアを自分の方向へと力一杯引き開けた。

が、開かれた扉の先にすでに人影は無かった・・・。


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