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雨の夏祭り

久遠トワ(くおん とわ)

女子高校生。風紀委員に所属している。

人間観察が趣味。

ラベンダー色の髪とパステルカラーの紫のような色の瞳をしていて真面目そうな見た目をしている。


星鏡ネモ(ほしかがみ ねも)

女子高校生。トワと同じクラス。

特に委員会に所属はしていない。

「ちょっと近寄りづらいよね」とよく噂されている。

深緑色の髪にエメラルドグリーンの瞳をした、自然を象徴しているような見た目をしている。


棚裏ネリネ(たなうら ねりね)

主人公と同じクラスの男子高校生。トワと同じく風紀委員に所属している。

人間の感情や考えていること見抜くのが得意。

大体の人をフルネームで呼ぶ。

パステルカラーの水色のような髪色をして、深い海を映すような青色の瞳をしている。

休み時間、頑張って勇気を出して、今日も垂れ耳みたいな髪型をしててかわいい好きな子に話しかけに行ってみた。

「ネモちゃん!!」

「わっ!?久遠さん!どうしたの?」

驚いた声かわいい……癒される…

「えっと、夏祭り一緒に行きませんか!!!」

「夏祭り…か、いいよ!行こう!!」

やっぱり迷ったよね一瞬。でも成功してよかった……

「やった〜!!」

「誘ってくれてありがとうね!すごく嬉しい」

春の太陽みたいな暖かい笑顔だった。前よりも頬が赤らんでいた。

その笑顔を見せてくれたのが本当に嬉しくて嬉しくてたまらなかった。



夏祭り当日になり、待ち合わせをしていた。

「楽しみだなぁ〜!絶対ネモちゃんかわいいじゃん」

(いやいや、楽しむのもたしかに大事だけど、ネリネくんの意思を受け継ぐために誘ったんだ。ネモちゃんに少しでも休んでもらって、ネリネくんも安心させたい)

そう気持ちを整理していたら、鼻に冷たい感触がした。

「えっ」

その瞬間ザーザーと雨が降ってきて、急いで屋根のあるところに行った。

(雨降っちゃったああああああああああ)

(傘持ってきてないよぉ)と思っていたらかわいらしい声が聞こえた。

「ごめん久遠さん、遅れて!雨降ってきちゃったね……大丈夫だった?」

折り畳み傘のような小さめの傘を手に持って、夏の海のような水色の綺麗でかわいい浴衣を着たネモちゃんがやってきた。

「大丈夫ー!それよりネモちゃん傘持ってきてたんだ?!さすがだね」

「えへへ、一応折り畳み傘持って行っとこうと思ってね」

かわいい。『えへへ』はかわいすぎる。誰でも惚れちゃうって。

見惚れていたら、ネモちゃんが言った。

「どうしようかぁ、多分中止だよね…」

「うぅ、ネモちゃんと屋台回りたかったのにぃ……」

そう言ってしまった瞬間、ネモちゃんを困らせることを言ってしまったと後悔した。言い直そうとしてネモちゃんの顔を見ると少し視線が下に向いていた。そして、顎に手を置いている。

「………じゃあさ、もしよければ私の家くる?久遠さん雨で濡れちゃってるし、お風呂使ってあったまった方がいいんじゃないかな…って……」

最後らへんの言葉を言ったとき、声を震わせて上目遣いをするように私の目を見つめて言っていた。

「い、いいのですか!?!?!?」

嬉しさが勝ってしまって即答でそう言ってしまった。

「もちろん!!大歓迎だよ!あ、今日は親出かけてるから変に気遣わなくていいからね」

優しい人だなと思った。その優しさは嘘ではないだろうけど、それを気にしているあたり、ネモちゃんは常に気を張っていそうだなと思った。



ネモの家にて。

「お邪魔しまーす!」

「どうぞ〜!はい!タオル使って!」

「わざわざありがとぉぉぉ」

「とりあえず、お風呂沸かしてくるね」

「ありがとうございます!!!」


ネモちゃんの家は本当に静かで、時計の音もなっていなく、外で降っている雨の音だけがわずかに聞こえる。

そのおかげか私は決心できた。どうやっても、ネモちゃんとどれだけ話しても線を引かれるなら、

「………ネモちゃんってさ、無理して笑うことあるよね」

呟くように言ったのに、静かな部屋だったからか声が自分でもはっきり聞こえた気がした。

不安になって振り向くと、ピタッ…とネモちゃんは止まっていた。

「あえっと、悪い意味じゃないんだよ!?ただ……」

私が焦って言葉を並べていると、ネモちゃんは肩に入っていたであろう力が抜け、ガクンと肩を落とした。そして、視線を落としながら微笑んだ。

(その顔、知ってる)

そう思っていたらネモちゃんは私の前に座った。

「ただ……?」

私が言いかけた言葉の続きを聞きたいと思ってくれたのか、そう聞き返してくれた。

「ネモちゃんは平気なフリするの、上手すぎるんだよ…」

ネモちゃんはなにも言わなかった。目線は下を向いたまま。否定もしなかった。

「ネモちゃんがそうしていると私も苦しいんだ…」

無意識に言葉が出てきた。言おうなんて思ってなかった。

訂正しようと思ったが、これが私の本音なんだと気づけた。きっとネリネくんのおかげだ。

「どうして………?」

ネモちゃんが頑張って目線を上げて、私の目を見つめてくれた。

"好きだから"ではない、絶対に。そんな簡単な言葉で片付けていいわけない。

ちゃんと向き合って、話さなきゃ。

「友達が…疲れてそうだったら心配になっちゃうから……」

「そんな…!気にしないで!!私は疲れてない!心配しないで、私は大丈夫だから」

私が落とした言の葉をネモちゃんは迷いもなくすぐに拾った。ネモちゃんの目はしっかり開いていて、真っ直ぐ私を見ながら私の手を握っている。

———冷たい。

「でも、ならさ、大切な人が辛そうだったら自分も辛くなっちゃうでしょ…?」

ネモちゃんはピタッ…と止まり、握っていた手の力が少し抜けた。

「………それは、分かる」

また目線を下げた。

「もしかして、ネリネくんのこと思い出した?笑」

答えなんてわかってた。

でも否定される可能性を信じて聞いてしまった。

「………全てお見通し、ですか」

まだ視線は下を向いているけれど、口角が上がっているのが見えた。そしてなにより、手が微かに温かくなっていた。

「うん、ネリネくんのこと思い出したよ」

私の目を真っ直ぐ見て、頬を赤くして言った。

(ああ、そうだよね)

ネリネくんには勝てないなぁ…

ここで泣くわけにはいかない。だから唇に力を入れて耐え凌ごうとした。

(諦めなきゃ、だな)

ネモちゃんの目を見ていられなくなった。

「ねぇ、久遠さん」

そう言ったとき、私の手離した。そしてネモちゃんは自分の手を握り直した。

「過去と今、どっちを選んでもいいのかな?」

私にはその言葉の意味がなんとなくわかった気がした。本当はネモちゃんの言葉を肯定したくなかった。けどネモちゃんの力になりたかった。

本当は否定したい。でも私がすべきことはネモちゃんを安心させること。だからそう言ってしまうのをなんとか飲み込んで言った。

「いいと思うよ」

私は最後の力を振り絞って、ネモちゃんの手を優しく包み込むように握り返した。ネモちゃんは私を見つめてくれている。でも私は見ていられなかった。目線を下に向けてしまった。

すると突然ネモちゃんは私を抱きしめた。

「ネモちゃん!?」

びっくりして声が裏返る。

ネモちゃんは何も言わずに、ぎゅーっと私を抱きしめてくれる。まるで女神に抱きしめられているみたい。

(なんでこんな思わせぶりなことをするの…?)

頭ではそう思っていたし、鼓動も早くて辛かったが、心はじわーっと温かくなっていた。

さっきまでは静かな部屋に響いて、ただ聞こえるだけだった雨の音が、いつのまにか優しい音に聞こえるようになっていた。

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