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ネモとネリネ

登場人物


久遠トワ(くおん とわ)

女子高校生。風紀委員に所属している。

人間観察が趣味。

ラベンダー色の髪とパステルカラーの紫のような色の瞳をしていて真面目そうな見た目をしている。


星鏡ネモ(ほしかがみ ねも)

女子高校生。トワと同じクラス。

特に委員会に所属はしていない。

「ちょっと近寄りづらいよね」とよく噂されている。

深緑色の髪にエメラルドグリーンの瞳をした、自然を象徴しているような見た目をしている。


棚裏ネリネ(たなうら ねりね)

主人公と同じクラスの男子高校生。トワと同じく風紀委員に所属している。

人間の感情や考えていること見抜くのが得意。

大体の人をフルネームで呼ぶ。

パステルカラーの水色のような髪色をして、深い海を映すような青色の瞳をしている。

翌日

「なんで今日風紀委員は挨拶運動があるのぉぉぉぉ」

「まあまあ、仕方がないよ。今日だけだから!」

私が吐いた弱音に、棚裏ネリネくんは慰めの言葉をくれた。

「そうだよね……!」

「頑張ろ!!あ、おはようございまーす」

「おはようございまーす」

ネリネくんとは委員会が一緒になってから、席が隣だったこともあってよく話すようになった。ネリネくんにはなぜか私と同じオーラを感じて、親しみやすかった。

お互い猫が好きで、一緒に猫カフェに行ったりもしたくらい。

まだ入学して1ヶ月ほどなのにありのままの自分で話せる友達ができてよかった。

「あ、そういえばさ!久遠トワが好きそうな、猫のスイーツ屋さん見つけたんだ。あとで写真送るわ」

「え!まじ!?ありがと!!」

ネリネくんは私のことをフルネームで呼ぶ。こんな人今まで出会ったことがなくて、とても印象が強い人だなと思ったのも仲良くなれたきっかけかもしれない。

(そういえば、ネモちゃんはまだ登校してこないのかな……)

少し寂しくなっていると、輝かしいエメラルドグリーンの瞳をした、脳裏に焼きつかれているほど、とても見慣れている人を見つけた。

「はっ!!!」

驚きと嬉しさを隠せず、つい驚きの声を上げてしまった。

「ほんと、久遠トワって星鏡の大ファンだよね」

「えっ!?」

そのことについて気づかれていたのにも驚いたが、なによりネモちゃんを"フルネームで呼ばなかった"ことにとても驚いた。

本人いわく、中学生になったころからフルネームで呼ぶようになったらしい。

(まさか、小学生からの知り合い……?)

そんな疑惑をいだいているとなぜかモヤっとした。

その瞬間だけ、ネリネくんの深い海の底を映すような美しい青色の瞳が、怖く見えた。

「いっつもタイミングがあれば星鏡のこと見てるよね笑」

「な、なぜそれを…!」

「そりゃあ、1ヶ月間一緒にいましたからねぇ。気づきますよ。あ、ほら星鏡来そうだよ!挨拶しないの?」

「する!!!」

今日も、垂れ耳の犬のようなかわいらしい髪型をしている。かわいい。

「久遠さんおは………」

ネモちゃんは『おはよう』と言いかけてなぜかその言葉を止めた。でも、ネモちゃんはネリネくんを一瞬見たときに、言葉が止まったように見えた。

「ネモちゃんおはよう!!」

ネモちゃんがなぜ言葉を止めたのかはわからない。けど、私は明るくネモちゃんに挨拶をしてみた。

「……うん!おはよ」

そう優しく微笑んで、いそいそと下駄箱へ向かっていった。

しかし、小さいころから人間観察が趣味だった私には違和感を覚えた。

だって、その口角が上がるまでに一拍ほどの間があったから。

(私が気づかないうちにネモちゃんとネリネくんの間になにかあったの…?)

そう思って、一瞬だけネリネくんの表情を見たら、優しい表情で次々と登校してくる生徒たちに挨拶をしている。

でも挨拶するその声が少しだけ震えていて、制服のズボンを握っている。

私はそんな彼を、見ていることしかできなかった。



挨拶運動が終わって、1限目が始まった。

でも授業ではなく、自習の時間だった。社会の先生がお休みをしているからだ。

担任の先生が代わりとして教室に来て

「そろそろ席替えをしようか」

という話になった。

私はただ必死に、

(ネモちゃんの隣になれますように、ネモちゃんの隣になれますように……)

と願っていた。

「星鏡の隣になれるといいね」

思考読まれた?!と少し驚いたが、勘の鋭いネリネくんだから納得した。

「うん!!」


結果………

(やった!ネモちゃんの近くだ!隣にはなれなかったけど、ネモちゃんの斜め後ろの席だから授業中も拝めれる……!でも、ネモちゃんの隣の席の人は誰だろう?)

そう思っていたら、ネリネくんがやってきた。

(あ、ネリネくんがネモちゃんの隣?)

ネリネくんがネモちゃんの隣に座って、

「よろしくね」

とネリネくんが言った。

お互い笑顔なはずなのに、空気がそれに合っていない。

ネリネくんはさっきと同様に声が微かに震えているし、

ネモちゃんは微笑んだあと、すぐに視線を逸らした。

(そうだ……この2人は隣になっちゃダメだった……でも、ネモちゃんとネリネくんには一体何があったの……?)

私には踏み込んでいい資格がない。

でも知りたいよ。


放課後、今日はネリネくんと一緒に帰った。

急に、ネリネくんは私に問いを投げかけた。

「なんで久遠トワは星鏡のことがそんなに気になるの?」

『かわいいから!』と、軽い感じで答えてはいけない気がした。真面目に、本当のことを言わなくてはいけないような空気だった。

それくらいネリネくんの表情が真面目だった。

「んー……自分でも分からないけど、ネモちゃんには引き込まれる魅力があるって感じるんだ。周りからは一重で目つきが悪くて怖いってよく耳に入ってしまうけど、そんなことないと思うの。だからネモちゃんのことをもっと知りたくて」

「そっか〜」

懐かしむような声色をしていた。

「分かるなぁ。自分も、星鏡には引き込まれる魅力があると思ってる」

「え!ネリネくんも!?!?」

「うん、そんな驚く?笑」

「驚くよ!!同じこと思ってたなんて」

本当に、ネリネくんも私と同じような人生を歩んできた人間なのかな。

「それでさ、久遠トワは何をそんなに悩んでいるの?」

「……え?」

ネリネくんは微笑んでいる。

でもあのときのネモちゃんと同じ"全てを見透かしているような目"をしている。

なんだか、怖い。

「あ、無理に言わなくていいよ。でももし言いたくないなら、自分の話を聞いてくれる?」

「もちろん!聞きたいな」

別に言いたくないわけじゃない。ただ、そもそも自分が何について悩んでいるのか分からないだけ。人間観察は小さいころからしてきたから空気を読んだり機嫌を取るのは得意だけど、自分について考えるのは慣れてない。

いや、出来るだけ向き合いたくなかった。

「自分さ、」

息が漏れている声だった。朝と同じくズボンを握っている。

だからネリネくんがなにを言っても絶対に受け止めようと思った。

「星鏡のことが好きなんだよね」

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