前編
みんなが緊張してドキドキの入園式。
私、高梨凜は人生初めての恋に落ちた。
その名前の通り、優しい笑顔が素敵な小鳥遊優君。
奇跡的にも同じタカナシ姓の彼に、私は運命を感じた。
でも、みんなに優しい彼はクラスの人気者で、引っ込み思案な私は近づいてお話することもできない…。
そんな様子を見ていて、私の想いに気がついた隣の席の男の子、溝沼翔君がアドバイスをしてくれた。
彼はユウ君の幼なじみで親友だから、彼のことならなんでも分かるそうだ。
『ユウは、優しい子が好きなんだよ。他の子に、自分のお菓子を分けてあげるような優しい子が良いって…』
それから私は、保育園で出るお菓子は全て溝沼君にあげた。
大好きなバナナケーキの日は、悲しくて思わず涙がこぼれたけれど、溝沼君の机に置いた。
そうしたら、溝沼君が『俺、バナナは食べれない』と言って、自分の分もバナナケーキを私にくれた。嬉しかった。
小学校にあがると、私はユウ君や溝沼君とは別のクラスになった。
小学校に入っても、やっぱりユウ君は人気者で、ますます彼に近づくことが出来なくなった…。
そんな私に相変わらず溝沼君は親切で、ユウ君に好かれるための新たなアドバイスをくれた。
『ユウは勉強が出来る子が好きなんだって…』
それからは、予習復習をして一生懸命頑張った。
問題を沢山解いた方が頭が良くなるという溝沼君の助言で、彼の学校や塾の宿題も解いてみた。
そのお陰か成績はメキメキ延び、両親に難関校と言われる女子校を受けてみないか?と勧められたけれど、私はユウ君と同じ学校に行きたかったので、地元の中学校に進学した。
中学校でも、またまたユウ君とは同じクラスになれなかった。溝沼君は同じクラスだったけれど…。
最近のユウ君はテニス部に入って頑張っている。ちょっと日焼けした彼も素敵…。
私は、そんな彼を支えるためにテニス部のマネージャーになりたいと思ったけれど、残念ながら地元の中学校では、マネージャーというポストは認められなかった。
がっかりする私に、またしても救いの手を差し伸べてくれたのは溝沼君だ。
『マネージャーにはなれないけれど、他にもテニスを頑張るユウの力になれる方法はあるぞ』
そして連れて来られた生徒会室。
何故か私は、生徒会役員として働くことになった。
確かにクラブ間の調整役も行うので、テニス部の彼をかな〜り遠回しに補佐は出来ているけれど…。
結局3年間、生徒会役員として頑張り、3年の時は溝沼君が会長、私が副会長をした。
生徒会役員として、テニス部の部長を務めるユウ君と話す機会が出来たのはラッキーだった。
高校に入ったら、今度こそ同じクラスになって、話し掛けよう!と思っていたのに、ユウ君はテニス部が強いことで有名な男子校山の上学院に進学を決めてしまった。
もう同じ高校に入ることは叶わない…。
諦めて、私は、親が勧める有名女子校を受験しようと思った。
けれど、またしても溝沼君がアドバイスをくれた。
『同じ高校には通えないけれど、坂の上高校なら、ユウの通う山の上学院と最寄り駅が一緒だから、通学の時に会えるぞ』
結局、私は諦めきれずに坂の上高校を受験することにした。
そしてユウ君は山の上学院に、私と溝沼君は坂の上高校に無事合格した。
テニス部の朝練があるユウ君とは普段は同じ電車にならないけれど、テスト期間などで朝練がない時は、たまに3人で通うようになった。
高校生になって、初めてユウ君と業務連絡や挨拶以外のお話が出来るようになった私は、あのまま女子校に行かなくて良かった!!と溝沼君に心から感謝した。
やっぱりユウ君はとても優しくて、意外にユーモアもあって、一緒にいてとても楽しい人だった。
高校になって、何よりも進展したことは、リンちゃん、ユウくんと呼びあえるようになったことだ。
それまでも、心の中ではずっとユウくん呼びだったけれど、実際に話しかける時はタカナシくん呼びだった。
ちなみに、ユウ君は私のことを副会長と役職名で呼んでいた。
高校になって、たまに一緒に通学するようになって、初めて彼は私の苗字がタカナシであることを知ったそうだ…。
『同じ苗字だったんだ…。だったら苗字呼びはややこしいから、下の名前で呼んでもいい?』
そう言ってくれたのは、ユウ君の方からだ。
溝沼君は、いつの間にか名前呼びになっている私達に驚いていたけれど、自分も下の名前で呼んで良いか?と聞いてきたので、もちろん了承した。
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誤字脱字報告ありがとうございます。
このお話はアルファポリス様にも投稿しております。
次は溝沼君視点になります。