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どちらかだけの選択なんて関係ない

稔は朝の光の中で、まだぼんやりと目をこすりながらベッドに横たわっていた。目の前に広がる日常が、彼に何かを問いかけているような気がしてならなかった。その問いかけに対して、どう答えるべきなのか、はっきりとはわからない。


「どちらかだけの選択なんて関係ない」


その言葉が、ふと心に浮かんだ。それは、一度も聞いたことがない言葉ではない。しかし、今日はそれが非常に強く感じられた。稔はこれまでの人生で、いくつもの選択を迫られ、その一つ一つに真剣に向き合ってきた。それは過去の出来事を選び取ってきたことであり、未来に対しての一歩を踏み出す決断でもあった。


だが、今、稔が感じているのは、「選択すること」そのものに対する疑問だった。確かに、人は何かを選ばなくてはならないことが多い。しかし、時にはその選択が、ただ一つの道を示すものだと思い込んでいるだけで、実際にはどちらかだけを選ばなくても、もっと大きな可能性が広がっているのではないか。


過去を振り返り、未来を見据えたとき、どちらかの道だけに進む必要なんてないのではないか。それが、稔の心に湧き上がった感情だった。人生における「どちらかを選ぶ」という課題は、必ずしも白か黒かで割り切れるものではない。どちらも持ち続け、歩みながら次第に形作られるのが、稔にとっての新たな選択肢のように思えた。


「今はまだ、答えを出さなくてもいい」


稔は静かに息を吐いた。これまでの自分は、何かを決めなければならないというプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。しかし、今はそのプレッシャーを感じることなく、ゆっくりと時間をかけて考えることができると感じていた。答えを急がなくても、時間は流れ、自然にその答えにたどり着くものだ。


それに気づいたとき、心の中にあったモヤモヤが少しずつ晴れていくのを感じた。何かを選ばなければいけない、何かに縛られなければならない、そんな風に考えていた自分が、少しずつ解き放たれていく感覚がした。


「選択肢が無限に広がっているわけではないけれど、どちらかだけの選択に縛られる必要はない」


稔はその思いを胸に、部屋の中を歩きながらふと思った。人生の選択肢には多くの側面がある。過去を引きずり、未来を恐れるのではなく、今の自分をそのままで受け入れて、少しずつ前に進んでいく。それが、今の自分にできる一番自然な選択なのだろう。


窓の外に目を向けると、朝の光が明るく差し込んでいる。青空が広がり、木々がそよ風に揺れている。その景色を見つめながら、稔は再び心の中で決意を新たにした。どちらかだけを選ぶ必要はない。今はただ、心のままに歩んでいけばいいのだと。


そして、歩みを進める中で、どんな選択が自分に訪れようと、きっとその時には自然に答えが見つかるのだと信じて。



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