悪役令嬢はいじめをしていたのではない、修行をさせていたのだ
「ユーフォミア、お前との婚約を破棄する!」
学園の卒業パーティで、この国の第二王子カイリは壇上に上がると、突然そう宣言した。
その近くには、ピンク色の髪の毛をした庇護欲を誘う女の子、男爵令嬢のミアがいた。
「殿下、急にどうされのですか?」
周りのざわめきを消すように、すっと静かだが、芯の通った声が発せられた。
ユーフォミア侯爵令嬢である。こんな状況ではあるが、焦ることもなく、冷静に現場を見て、
混乱を防ぐために、前に出てきたようである。
「ユーフォミア、お前に、男爵令嬢ミアをいじめた証拠が上がっている。そのような残虐な女と結婚することはできない。したがって、お前との婚約を破棄する!」
カイリ王子は、再度ユーフォミアに向かって、叫んだ。
「わたくしが一体何をしたと?」
「とぼけるな!証拠は上がっている。
1つ目、お前は彼女を噴水に突き落としたな!
2つ目、彼女を凶悪なモンスター、オークに襲わせたな!
3つ目、彼女を体育館倉庫に1日閉じ込めたな!どうだ!言い訳ができるなら行ってみろ!」
「なんて酷いことを・・・」周りの人はざわめいた。
しかし、ユーフォミア侯爵令嬢は、首をかしげるとドヤ顔で言った。
「殿下、恐れながら情報が古いかと。
最近は、高さ1000mの崖から突き落としていまし、
SSSランクのダークレジェンドドラゴンに襲わせましたし、
多次元空間魔法で永劫牢獄に閉じ込めましたわ!我ながら頑張りました!
偉いぞわたし!」
「えっ・・・。何それ怖い。口調も変わっているし・・・。
というかなんで彼女生きてるの・・・?」
「それは師匠に鍛えられたからです!」
ピンク色の令嬢ミアが飛び上がって叫んだ。ドヤ顔で。
「えっと・・・。ユーフォミアにいじめられていたんじゃないの?」
カイリ王子が尋ねると、
「いいえ、ユーフォミア師匠は私を鍛えてくれたのです。入学当初、魔王を倒し、世界を救う勇者になりたいと言った私を、周りの人はそんなこと出来っこないと笑いました。でも師匠だけは、それを信じて、鍛えてくれたのです。」と、キラキラ目を輝かせて話すミア男爵令嬢と
「うんうん、あの頃は大変だったわ。彼女に経験を積ませるために、弱いラビットから始めてレベルを徐々に上げていったし、ユニーククエストを進めて武具も集めさせた。でも最終的にダークレジェンドドラゴンに襲わせるのはちょっと大変だったなあ・・・。暗黒山までドラゴン王アルテマドラゴンと話し合い(物理)に行かないといけなかったし・・・。あと、成長が早いからどんどん行動拘束魔法をレベルアップしないといけなくて、時空神殿の邪神エヴァーダークに教えてもらい(物理)に行かないといけなかったし・・・。1000mの崖ってなかなかないので、大地を割るために大地の精霊タイタンにお願い(物理)しにいったり・・・。」
と、しみじみと昔を懐かしむように頷くユーフォミア侯爵令嬢
「ちょっと待って?色々物騒な言葉が混ざっていたような気がしたんだけど!アルテマドラゴンとかエバーダーク、タイタンって、簡単に世界を滅ぼせるような伝説上の化け物だったよな!」
と突っ込むカイリ王子
「でも師匠はひどいんです!私が頑張って修行して、魔王を倒そうとしていたのに、魔王を倒しちゃったのですよ?」王子のツッコミを無視して、ユーフォミア侯爵令嬢に対して叫ぶミア男爵令嬢
「ごめんめんご。いやー、移動している時に、なんかちょっかいをかけてくる虫がいたので、
燃やしちゃったんだけど、それ魔王だったみたい。お詫びにフルーツパフェ奢るから」
「もう・・・。仕方ない師匠ですね。今回だけですよ」
「はいはい」
と言って二人仲良く会場を去っていった
残されたカイリ王子は、
「ちょっと待て!いや魔王が討伐されたことを報告するのが先か?アルテマドラゴンとかのことは聞かなかったことにしよう・・・」と混乱して立ち尽くすのであった。
これが後の世に語り継がれていく、伝説の勇者ミアとその師匠である賢者ユーフォミアの始まりであった