想い出になったひと3
「だが、彼女は元々体が弱くて、彼女が十歳頃のことだな。流行り病にかかってしまって、亡くなった。しばらく会っていないなと思ったらそう聞かされて、ショックだったな。彼女を亡くしたのもそうだけど、最期に会えなかったのも、葬儀に出席できなかったのも」
フレイディの声は流石に沈痛なものになる。
アマリアも胸が詰まるような思いでそれを聞いた。
レノスブル家か、それとも先方の都合によるものか……葬儀にも出席できなかったのだという。
それならば……。
その通りのことをフレイディは言った。
「そのせいで、長く引きずってしまったのかもしれない。あんなことは周りが言っているだけの嘘で、不意に彼女が俺を呼んで、ひょっこり現れるんじゃないか、とか……、ああ、今はもうそんな妄想はしていないさ。もう過去だから」
そこでアマリアのほうを見て、笑みを浮かべたフレイディ。
笑顔なんて浮かべないでほしい、とアマリアは思った。
こんな、作り笑顔が明らかな表情で。胸には痛みしかないだろうに。
でもフレイディが無理をしてでも笑みを浮かべたのはわかる。
アマリアはなにも言えなかった。
「それで……、新しい婚約だの、結婚だの、到底考えられなかった。そもそも一年近く、まともに生活できなかったくらいだ」
アマリアから視線を外して、フレイディは軽くうつむくような姿勢になる。
地面に視線を落とした。
フィオナから聞いたことではあったけれど、本人の口から聞かされれば、余計にその傷の度合いや苦しさがダイレクトに伝わってくる。
アマリアの胸まで痛んだ。
喉に熱いものが込み上げそうになったくらいだ。
ここで自分が泣いていいところではないので、なんとか呑み込んで、ただ続きを待つ。
「だから、急にエルシーとのことが蘇ってきて、動揺したんだ」
話は元の場所へ戻ってきた。
あのとき、アマリアが軽い気持ちで、見つけたエルシーの絵の資料について話してしまったときのこと。
フレイディが衝撃を受けて当然だった。
ここまでの説明をすべて聞いては、むしろあの程度で済んだのは軽いほうだろう。
ひとによっては激高してもおかしくないことだった。




