想い出になったひと2
そのあとは少し落ち着いた話になった。
ベンチに二人、隣同士座って、フレイディはゆっくり話をはじめた。
レオンはフレイディの足元にうずくまって、休憩とばかりの様子でいた。
たくさん散歩をして満足したのと、それからフレイディとアマリアの間にあった少し妙な空気がなくなって安心した。
そんな気持ちも、ゆったりしたその態度に表れていた。
「あの絵の少女は俺の婚約者だった、という話は姉さんから聞いたと思うが、詳しくは俺からも話そう。彼女……エルシーが六歳の頃から婚約していたんだ。俺とは四歳違いで、俺はそのとき十歳だった」
フレイディが話していく内容を、アマリアは静かに聞いていた。
胸が痛むかと思ったけれど、思ったよりは痛まない。
落ち着いた気持ちで聞くことができて、自分でかえって意外に思ったほどだ。
「マルティス子爵家のご令嬢でね。勿論、父が決めたのだし、子供だったから経緯など俺は今でも知らないけれど、とにかくそう決まって、紹介された。『お前はこの子と結婚するのだよ』と」
なんとなく、懐かしそうな色がフレイディの瞳に浮かんだ。
思い出しているのかもしれない。
あの絵の中の少女のこと、当時あったこと……もう思い出になったこと。
「貴族の息子だから、婚約者が決められることがあるのは幼い頃から知っていたけどね、結婚なんて、十歳の少年にはまだ実感なんてなかったよ。不思議な感じがしたものだ」
フレイディの話す内容は聞けるのに、その目に映っているだろうものが見えないのを、なんだかアマリアはもどかしく感じてしまった。
どうあっても自分はその場にいない。
そもそも時系列的にも、アマリアはこの世に産まれたか産まれていないかも怪しいくらい、昔のことだ。
「下にきょうだいがいなかったから、妹ができたように思ったのもあるかな。無邪気なことだが、とても嬉しくなって、よく一緒に遊んだものだった」
懐かしそうな瞳と表情に、アマリアの胸が不意に痛んだ。
ずきっとはっきり痛みを覚える。
今、フレイディの目に自分は映っていない。
それをとても悲しく、また口惜しく感じてしまったのだ。




