表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/128

想い出になったひと1

「すまなかった、アマリア」


 ベンチに座り、その場に落ち着き、ふたことみこと話しただけで、フレイディはすぐに切り出した。


 単刀直入に謝られて、アマリアのほうが驚いてしまう。


 自分から謝ろうと思っていたのに。


「え、ど、どうしてフレイディ様が謝られるのですか?」


 頭まで下げられて、アマリアはおろおろしてしまった。


 こうなるとは予想外過ぎたのだ。


「どうしてって、俺が悪かったからに決まっているだろう。アマリアに酷い態度を取ってしまったと、あれから悔やんだんだ」


 なのにフレイディはきっぱり言い、そんなふうに話してくれた。


 アマリアは黙ってしまう。


 確かに、あのときのフレイディの様子は冷たくて、怒りや不快がはっきりと表に出ていて……。


 良い態度とはいえなかっただろう。


 でもそれは仕方のないことではないか、とアマリアは思う。


 触れられたくないことに、配慮なく触れられたら、誰だってあんなふうになるだろう。


 なのにフレイディは言葉を止めない。


 続けて言った。


「倉庫を見ても良いと言ったのは俺なのに……、それならどの資料を見られようと文句を言う資格などなかったよ。あんな態度を見せて悪かった」


 心底すまなさそうに言われて、アマリアはとくんと胸が高鳴るのを感じた。


 やはりとても優しいひとだ。


 それは理性的な思考だろう。


 でもそれが正しかったと言うのだ。


 自分が不快感を覚えたことよりも、正しいことを選んで、それに倣うという気持ちだ。


 感じ入ってしまったアマリア。


 言いたかったことは、するっと出てきた。


「いえ、私こそ無邪気にし過ぎました。やはり不躾でしたし、それに知らなかったとはいえ、軽率に触れて良いことではなかったのですから……、申し訳ございません」


 自分からも頭を下げる。


 アマリアのそれに、今度数秒黙るのはフレイディだった。


 目を丸くしてアマリアを見ている。


 そのあと、頭に手をやった。


 髪をくしゃりと掻き乱す。


「アマリアは……優しいな。怒ったっていいんだよ」


 困った、という声音だったが、きっと悪い意味ではなかっただろう。


 その様子も言葉も、安堵した、という色がたっぷり滲んでいたのだから。


 だからアマリアも笑ってみせる。


 心からの笑みと言葉だ。


「怒れるはずなどあるものですか。大切なことなのでしょう?」


「……うん。そうだな」


 それで二人の間のわだかまりはするすると解けていった。


 不思議なものだ、と思う。


 喧嘩、ではないかもしれないが、それに近いいさかいをして、仲直りをして。


 こんなことは、出会ったあのとき以来のやりとりであった。


 でもちゃんと話ができた。


 仲直りができた。


 とても素晴らしいことだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ