想い出になったひと1
「すまなかった、アマリア」
ベンチに座り、その場に落ち着き、ふたことみこと話しただけで、フレイディはすぐに切り出した。
単刀直入に謝られて、アマリアのほうが驚いてしまう。
自分から謝ろうと思っていたのに。
「え、ど、どうしてフレイディ様が謝られるのですか?」
頭まで下げられて、アマリアはおろおろしてしまった。
こうなるとは予想外過ぎたのだ。
「どうしてって、俺が悪かったからに決まっているだろう。アマリアに酷い態度を取ってしまったと、あれから悔やんだんだ」
なのにフレイディはきっぱり言い、そんなふうに話してくれた。
アマリアは黙ってしまう。
確かに、あのときのフレイディの様子は冷たくて、怒りや不快がはっきりと表に出ていて……。
良い態度とはいえなかっただろう。
でもそれは仕方のないことではないか、とアマリアは思う。
触れられたくないことに、配慮なく触れられたら、誰だってあんなふうになるだろう。
なのにフレイディは言葉を止めない。
続けて言った。
「倉庫を見ても良いと言ったのは俺なのに……、それならどの資料を見られようと文句を言う資格などなかったよ。あんな態度を見せて悪かった」
心底すまなさそうに言われて、アマリアはとくんと胸が高鳴るのを感じた。
やはりとても優しいひとだ。
それは理性的な思考だろう。
でもそれが正しかったと言うのだ。
自分が不快感を覚えたことよりも、正しいことを選んで、それに倣うという気持ちだ。
感じ入ってしまったアマリア。
言いたかったことは、するっと出てきた。
「いえ、私こそ無邪気にし過ぎました。やはり不躾でしたし、それに知らなかったとはいえ、軽率に触れて良いことではなかったのですから……、申し訳ございません」
自分からも頭を下げる。
アマリアのそれに、今度数秒黙るのはフレイディだった。
目を丸くしてアマリアを見ている。
そのあと、頭に手をやった。
髪をくしゃりと掻き乱す。
「アマリアは……優しいな。怒ったっていいんだよ」
困った、という声音だったが、きっと悪い意味ではなかっただろう。
その様子も言葉も、安堵した、という色がたっぷり滲んでいたのだから。
だからアマリアも笑ってみせる。
心からの笑みと言葉だ。
「怒れるはずなどあるものですか。大切なことなのでしょう?」
「……うん。そうだな」
それで二人の間のわだかまりはするすると解けていった。
不思議なものだ、と思う。
喧嘩、ではないかもしれないが、それに近いいさかいをして、仲直りをして。
こんなことは、出会ったあのとき以来のやりとりであった。
でもちゃんと話ができた。
仲直りができた。
とても素晴らしいことだと思う。




