明るい朝に1
翌朝、アマリアは庭に出ていた。
早めに目覚めてしまったので散歩をしようと思ったのだ。
結婚前、初めてレノスブル家を訪ねたときに、フレイディと二人で散歩したところは広大だが、もっと近く、気軽に歩ける場所もある。
あずまやのあるあたりなどがまさにそれ。
玄関から出て、正門へ向かうのとは違うほうへ向かった先に、草木の綺麗な小さめの庭があるのだ。
春とはいえまだ朝は冷える。
アマリアはしっかりストールを羽織ってきていた。
それでも日はもう長くなっている。
朝食前という早めの時間でも、太陽はのぼっていてあたりはすっかり明るくなっていた。
時折、散歩をするのが好きな場所だ。
フレイディと一緒に広大で植物も多いところを歩くこともあるし、その楽しさはフレイディが教えてくれたようなものだ。
一人で行くことはあまりないが、たまに「気分転換にまいりませんか?」とこちらからねだることもある。
アマリアは朝露に濡れている草木を見ながら、道をゆっくり歩いていった。
朝の光の中では、緑がより綺麗に感じられた。
昨夜、ぐっすり眠ったことで気持ちは落ち着いていた。
朝食のあとにでも、フレイディに「お話をしませんか?」と誘ってみようと思う。
多分、落ち着いてそう切り出せるとも思う。
話をするのは緊張してしまうけれど、それは仕方がない。
それにフレイディのほうも多少なり、思考の整理ができただろうし。
やはり時間を置いて良かったのだ。
アマリアはそう実感した。
ただ、その間寂しかった、とも思ってしまった。
そう思ったことに自分で驚いたくらいだ。
フレイディと一緒に過ごさないことや、心から仲良くあれないことを寂しく思うなんて。
結婚したばかりの頃は考えなかったかもしれない。
アマリアの頭には、立派な肖像画のことばかりがあったから。
でも今はきっと違う。
肖像画は確かに大切。
立派に完成させたい。
けれどフレイディのことはもっと大切で、大事にしたいと思う。
たとえそれがあと三ヵ月ほどで終わってしまう縁だとしても、大切なひとになったことに変わりはないのだから。
契約が終わって帰るときには、もっと寂しくなるでしょう。
アマリアは朝日の中に春の花、たんぽぽを見つけて眺めながら思った。
明るい黄色は心が明るくなるようだったが、何故かちょっと物悲しかった。
季節はあれから随分進んでしまったのだと思い知らされて。
あの頃は薔薇が咲いていた。
初夏の薔薇は活き活きしていて美しかったな、と懐かしく思う。
しかし、そこでなにか音がした。
わん、わんっ! と、元気のいい吠える声。
レオンだ。
「レオンさん?」
アマリアが振り返ると、たったっとレオンがこちらへ駆けてくるところ。
どうやら朝の散歩から帰ったところのようだ。




