絵の中の少女は5
フィオナはそう言ったアマリアの顔を見つめ、向こうは表情を崩した。
泣き笑いのような形だったけれど、確かに笑ってくれる。
「勿論よ。きっとアマリアが思っているよりたくさん」
その優しい笑顔につられたように、アマリアも笑みが出てきた。
まだ作ったものだったけれど、確かに『笑みを浮かべたい』という気持ちからの表情だ。
「それなら、……嬉しいです」
「ええ。もっと自信を持って」
フィオナは立ち上がり、アマリアに身を寄せてきた。
そして腕を伸ばし、アマリアを軽く抱きしめてくれたのだ。
百合のような甘い香りが漂う。
きっとフィオナのつけている香水だろう。
とても優しい香りで、まるで……。
アマリアの頭にあることがよぎった。
……お母さまにしていただいているようだわ。
その気持ちはアマリアの胸に、痛みと幸せの両方を呼び起こした。
まだ物事つかぬうちに早逝してしまった母の記憶はほとんどない。
だからあまり寂しいと思ったこともない。
優しい父や親戚、乳母にも近いハンナ。
それらのひとたちがいてくれたから。
でもやはり母を恋しく思う気持ちはあったのだろう。
だってこうして優しい腕に抱かれていると、とても安心する。
「フレイディには少し話をしておくわね」
フィオナは数分、アマリアを抱きしめていたところから、そっと離して言った。
アマリアの目を見つめて、穏やかになった響きで言う。
「大丈夫、叱ったりしないから」
アマリアからの視線をどう受け取ったのか。
フィオナの目は悪戯っぽくなる。
別にそういうことを心配したわけでは。
慌ててそう言おうとしたけれど、そんなことはわかっているとばかりにフィオナは笑った。
今度は泣き笑いではなく、はっきり笑顔だった。
「でも若奥様を泣かせたことは叱るわよ」
茶化すような言い方と内容。
アマリアの顔にも笑みが浮かんでしまった。
どうしてフィオナがそんなふうに言ってくれたかはわかる。
アマリアの心をほどかせてくれるためだ。
「ありがとうございます」
アマリアはもう一度、目元を拭って、今度こそ涙をすべて拭い去って、言った。
フィオナはこれからフレイディに話をして、サポートしてくれるのかもしれない。
でもその先は自分ですることだ。
フレイディに謝ろう。
事情についても、してしまったことについても、ちゃんと言おう。
和解できるかはフレイディ次第だけど、今、自分ができることや、すべきことはそれなのだから。




