素敵なお呼ばれ4
「とても美味しいです。どちらの茶葉でしょう……などとお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。私も侍従からの又聞きだがね、西のほうの国の……」
お茶はゆっくり進んでいった。
アマリアはサンドイッチを両手に持ち、上品に食べる。
大胆、奔放な性格とはいえ、男爵令嬢である。
食事の作法は完璧で、家でもそうしているのだから、板についているはずだ。
サンドイッチは細かく潰された玉子が挟んであるものと、ハムとレタスが挟んでいるものの二種があった。
どちらも丁寧に作られた味だ。
空腹だったアマリアは、ぱくぱく食べてしまわないように気をつけながら、ゆっくり食べていった。
「先ほどアトリエについて聞いたけれど、その、絵のほうはどうなのかな」
軽い食事の品がなくなって、スコーンに移りながらフレイディが聞いてきた。
少々気まずそうだった。
絵が修復可能という話はしていたけれど、具体的な方法は知らないだろうから、どのくらい手間や時間がかかるかはわからないのだろう。
「ええ。絵の具は一通り乾きましたから、要らないところについてしまったのをこそげとって、元に戻したところです。昨日からは改めて塗るのをはじめましたの」
軽く返答し、アマリアは現状を説明した。
アマリアの話す、絵を描く手順や技法など、フレイディは興味深げに聞いてくれる。
アマリアのほうは、スコーンに何気なく塗ったクロテッドクリームがあまりに美味なほうに気を取られたくらいだったけれど。
一通り聞いたあと、フレイディは感心したように息をついた。
「アマリア嬢は芸術家なのだね」
言われて、今度はアマリアのほうが気まずくなる。
自慢げに聞こえてしまっただろうか?
「いえ、そんな。ただの趣味ですわ」
謙遜するように言ったけれど、フレイディに「いや」と首を振られてしまった。
「あんな事件のときに、と思われてしまうかもしれないけれど、アトリエにかけられていた絵を少し見て、感じたんだ。とても丁寧に描かれているし、見る者の目を惹くような絵画だな、と」
心からそう思っている、という声でそう言われては、もっとくすぐったくなった。
今度は嬉しい意味で、だ。
「勿体ないです」
答える声も、少し小さめになってしまったくらいだ。
そのあとはそれぞれの家や、現在どう過ごしているか、など日常の話になって、やがてお茶の時間は終わった。
途中、一回紅茶のお代わりをついでもらうためにハリソンを呼んだ。
新しい熱々の紅茶を持ってきてくれたハリソンは、やはりにこにこして嬉しそうだった。
先ほどの『珍しいことである』からするに、多分話が弾んでいるように見えて安心したとか、嬉しくなったとかなのでしょう、とアマリアは推察した。
そんな二杯目のお茶もなくなり、ティースタンドも空っぽになった。
アマリアのお腹はちょうどよく膨れていた。
満腹というほどではないが、このほうがあとでディナーを呼ばれるのに都合がいい。
そのあとは室内に移動して食休みとなった。
ソファで軽い話を十数分ほどしたあと、フレイディが窓のほうを示した。
「良かったらお腹ごなしに庭の散歩でもいかがかな。自慢の庭なんだ」
アマリアの顔は、ぱっと明るくなった。
素敵なお庭。
歩けたら楽しいだろうと思ったのだ。
「ええ! 是非お邪魔したいです」
素直な返事が出てくる。
二人は席を立ち、それぞれ軽く支度を整え、改めて連れ立って庭へと向かった。