表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/128

絵の中の少女は2

 確かに伯爵家ともあろう身分なら、幼い頃から婚約者がいることはなにも不思議ではない。


 でも唐突な話過ぎて、まずはそこから思考が追い付かなかった。


 それから次に湧いてきたのは、ずきっとした胸の痛みだった。


 はっきり胸が痛んだのだ。


 婚約者。


 フレイディ様に……結婚する予定だった方が……。


 じわじわと頭にフィオナの説明が染み入ってきて、アマリアはごくりと喉を鳴らした。


 どうしよう、と思う。


 心臓はなんとなく嫌な具合にどくどく鳴りはじめていた。


 体が勝手に反応してしまうほどショックだったのだ、とぼんやり思った。


「そう……なの、ですか」


 やっとそれだけ言った。


 ほかに言えることなんてない。


 だがそれはまだ甘かったのだ。


 フィオナのほうも数秒、ためらったようだった。


 でも心を決めた様子になり、もう一度、口を開いた。


「でもエルシーさんは、そうね、十歳くらいの頃かしら。病気で亡くなったのよ」


 ひゅっと心臓が冷えた。


 まるで高いところから突き落とされたように、冷たい衝撃が走る。


 婚約者だった少女。


 既に亡くなっていたなんて。


 それだけでもう、フレイディのあの態度には思い当たった。


 その通りのことをフィオナも言う。


 沈痛な面持ちになっていた。


「こんなことを若奥様に言っていいとは思わないけれど……、フレイディはエルシーさんのことをかわいがっていたからね。それはショックを受けていたわ。もうだいぶ昔……十年くらいは前のことだけど」


 どくどくと心臓が嫌な感覚で血を流すのを感じられる。


 フレイディの感じた痛みには到底及ばないだろうけれど、それとリンクするような感情ではあるだろう。


 アマリアは今度、なにも言えなかった。


 一体どの点に自分がショックを受けたのかもわからない。


 フレイディに婚約者がいたこと?


 フレイディがその彼女に気持ちを寄せていたこと?


 それとも、婚約者が亡くなり、フレイディが大変傷ついたこと……?


 すべてだっただろうが、どの比重が大きいのかはすぐになんてわからない。


 ただ、胸がずきずき痛かった。


 フレイディにそんな事情があったこと、自分はまったく知らなかったのだ。


 こんな事情、話題にするのはタブーとまではいわずとも、軽率に話せることではない。


 だからアマリアも今まで聞く機会などなかったのだろう。


 なんて呑気だったんだろう。


 自分のこれまでに歯噛みしたくなる。


 フレイディの抱えていたことも知らずに、ただ楽しく過ごしていただけだったなんて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ