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仲たがい3

「あ、……ああ、すまない」


 フレイディが半ば取り落とすように、ティーカップをソーサーに戻した音だ。


 普段なら音なんて立たないように丁寧な手つきで戻すのに。


 それには自分ですぐに気付いたようで、謝ってきた。


 が、その口調は明らかに動揺していた。


 アマリアが言いかけたことが原因なのは明らかであった。


「……エルシー……」


 小さな声で呟いた。


 ぼんやりした口調であった。


 アマリアはそこで既に察した。


 これは話題に出してはいけないことだったのかもしれない。


 フレイディにはすぐ思い当たることがあったような様子だ。


 しかもこの様子からするに、あまり良いものではない気しかしない。


「あの、……」


 言いかけて、アマリアの言葉は止まってしまう。


 すみませんでした、と言おうと思ったのに、「いけないこと」とはっきり言われたわけではない。


 それでは謝るのは不適切だろうか。


 そう頭に浮かんで、なにを言ったものかわからなくなる。


 その場に沈黙が落ちた。


 どうしよう、なにを言ったらいいのでしょう。


 アマリアは内心、ひやひやする感覚を覚えたのだけど、不意にその沈黙は破られた。


「関係のないものを手に取るのは、あまり褒められたことではないね」


 静かな口調で言われて、アマリアの胸の中は、今度、ひやひやどころか、ひゅっと冷たくなった。


 フレイディの口調は静かで、そして固くて冷たいとすらいえるものだった。


 内包されているのは怒りか、不快か……。


 両方かもしれない。


「も、申し訳ございません。同じ類のものとばかり……」


 アマリアは肩がすくんでしまう。


 フレイディがどんな表情をしているかも見られない。


 テーブルの上、少しだけ残ったハーブティーの水面に視線を落とした。


 こちらも固くなった声で謝る。


 でもフレイディはいつものようににこやかに許してはくれなかった。


 声は固いままだった。


「表紙を見れば、関係のないものとわかっただろう」


「……はい」


 もっと縮こまるしかなくなったアマリア。


 やはり良くなかったのだ。


 話題にしたことか、見てしまったことか、これも両方だろう。


 フレイディにとっては触れられたくないことだった。


 それはもう、明らかだった。

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