素敵なお呼ばれ3
「ちょっと、ハリソン。アマリア嬢に笑われてしまったじゃないか」
フレイディがそんなふうに砕けた口調と声で言い、おまけに内容は膨れるようなものだった。
アマリアはもう一度小さく笑ってしまったし、ハリソンも楽しげな笑みをフレイディに向けた。
「ほほ、良いではありませんか。フレイディ様が女性をお招きするなど滅多にございませんから喜ばしくて、わたくしは嬉しいのです」
「だからハリソン! そういうことを言わなくて良いと言っている」
ハリソンの言葉には、ちょっと焦ったような響きのフレイディが答えた。
アマリアは意外に思う。
いや、焦った姿がではない。
『女性を招くのは珍しい』という点だ。
これほど容姿端麗な方で、継承はまだとしても、ご立派な大人の男性でいらっしゃるのに、女性とお茶などあまりしないのだという。
つまり、恋人や婚約者はいないというのだろうか?
アマリアはそんな推測に至り、内心、首をかしげた。
そんなアマリアの様子は、フレイディもハリソンも気に留めた様子がなかった。
最後に紅茶をカップについで、ハリソンは一歩引く。
「さ、お支度も整いましたので、わたくしはこれにて失礼いたします。お代わりや御用はそちらのベルを鳴らしてくださいませ」
そして再び丁寧な礼をして、空いたカートを押して出ていった。
その後ろ姿を見送り、ドアが閉まるのを見届けて、フレイディは小さくため息をついた。
「すまないね。言った通り、子供の頃から世話をされているものだから、じいやのようなものなんだ」
少々恥ずかしい、という響きはやはりアマリアを笑顔にさせてしまうのだった。
「そうなのですね。素敵です」
フォロー半分、本心半分で言ったことに、フレイディははにかむように笑った。
「そうかい……?」
そんなやりとりで支度は済み、本格的にアフタヌーンティーがはじまった。
「アマリア嬢はお昼をあまり摂っていないと思ったから、軽い食事を多くさせたよ。お気に召すといいのだが」
ティーカップを手に取る前に、フレイディがそう言って三段のティースタンドを示した。
確かにそこに乗っているものは、サンドイッチやキッシュなどが複数。
小さなスコーンが数個。
ケーキなどのスイーツのほうが、むしろ少ないくらいかもしれない。
お腹が減っていたところには魅力的で、アマリアはお腹が鳴りそうなのを堪えなければいけなかった。
代わりに笑みを浮かべる。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。ええ、馬車の中で少し摘まんだだけですので……有難く存じます」
美しい花の模様が入った白いティーカップを手に取り、アマリアはまずひとくち紅茶を飲んだ。
薫り高く、茶葉のかぐわしい香りが鼻を心地良くくすぐった。
当たり前かもしれないが、家で日常的に飲むものよりずっと美味しかった。
家のものだって、それなりの質だ。
美味しくて高級な部類なのに、それよりずっと上のランクなのが、ひとくち飲んだだけでわかってしまう。




