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知らない少女の絵3

 アマリアがさっき「探していたものはこれ」と確信したのは、中に書いてあった『誰を描いたものか』という名前がほとんど知っている者のものだったからだ。


 フレイディに、姉のフィオナ、もしくはレノスブル卿、ほかの親戚……。


 だからなんの疑問もなく「これね」と思ったのに、今、見ているものはおかしかった。


 少女の絵だった。


 記録なのだから、絵がそのまま描いてあるわけではない。


 構図の構想やデッサン、ほかにはいくつかの色を試したり……その程度。


 でもそのデッサンの中には顔立ちまで詳しく描いてあるものがあって、アマリアはそれをじっと見てしまった。


 知らない顔だった。


 だって書いてある名前が既に『レノスブル』の姓ではない。


 まったく別の家の娘なのだろう。


 年齢は六、七歳頃に見えた。


 少女も少女だ。


 かわいらしい顔立ちだった。


 鉛筆描きで白黒なので、髪の色まではわからない。


 けれど髪にあまり暗い色を使っていないところから、金髪とか、もしくは薄茶色とか、淡い色の髪色なのだろうと察せた。


 アマリアがその記録をじっくり見てしまったのは、なんとなく引かれるものがあったからだ。


 これは大切なもののような気がするわ。


 そんなふうに察せた。


 古そうなノートだから、これを取っておいてあること自体、それなりに重要な絵だったのだろう。


 アマリアは最後のページまでめくり終えて、少し考えた。


 どうして気になったのかわからなかった。


 レノスブル家の血縁ではなさそうな少女の絵に関する記録が、どうしてこんなところにあるのか。


 しかもしっかりとしまいこんでいたのかという点は、勿論不思議だ。


 でもそのほかに……第六感というか。


 そういう部分から気になっているのだろうな、という感覚があった。


 そのノートも持ち帰ろうかと思ったが、思い直した。


 今日は『肖像画に必要な記録』を探しに来たのだ。


 これも肖像画の記録には違いないが、目的にしていたものではない。


 勝手に持ち出すのはいけないだろう。


 よってアマリアはそのノートを引き出しに戻した。


 目的のノートだけを手にして、引き出しを閉める。


 そのあと、倉庫内をあちこち見てしまった。


 記録があるくらいだから、もしかしたら絵になった完成品が一緒にあるかもしれない。


 そう思ったのだ。


 でもそれらしきものは見つからなかった。


 少女の絵というのがそもそもなかったのだ。


 残念ながら、解決や納得にはなりそうにない。


 アマリアは消化不良な思いを覚えつつも、あまり長居をするのは良くないのでそろそろ倉庫を出ることにした。


 入り口を出て、ドアを閉めて、鍵もきちんとかける。


 そうしてから廊下を歩きだした。


 まずは自室にこのノートを持っていって、ハンナに手入れを頼もうと思う。


 することはそれのはずで、目的のものが見つかってうきうき楽しみにしていたのに、さっき見つけてしまったものが何故だか頭から離れなかった。


 ノートの中に書いてあった名前。


『エルシー・マルティス』。


 まったく知らないものだったというのに。

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