二人きりの一夜3
アマリアはきょとんとした。
てっきりフレイディが眠るのだと思っていたのだ。
だってベッドは一台しかないのだから、フレイディが使うのが道理だろう。
「え、いえ、フレイディ様がお使いくださいませ」
戸惑って言ったのに、フレイディは何故か笑みの表情になった。
「きみのほうが体力はないだろう。しっかり休んでおかなければ、明日辛いよ」
「それはそうかもしれませんけど……」
確かにその通りだ。
女性と男性という体力の違い、十歳ほども差がある年齢による違い……。
どれをとってもアマリアのほうが疲労は強いはずだ。
でもだからといって、すぐにお礼を言って借りるというのは図々しいのでは。
アマリアはためらってしまう。
そこは大胆な気質よりも、ひとを思いやる優しい心が強く出ていただろう。
「それに暖炉があるとはいえ、寒い季節なのだよ。明日無事だろうと、帰ってから寝込むことになっては困る」
フレイディはもうひとつ、理由を口にする。
真冬であるし、外は強い雨風。
真夜中になれば、冷え込むに決まっている。
疲れているところにそれでは、帰ってから熱のひとつも出してしまうかもしれない。
自分でも「大丈夫」という確信はなかったし、できれば回避したい。
「そうですわね。絵の進みも遅れてしまいますし」
ためらい、ためらい、そう言ったアマリア。
だが口に出たのは絵のことだった。
もう本塗りに入って、だいぶ進んできた絵。
あれが遅れてしまうのは自分としても不本意だ。
それにまだ半年ほどはあるとしたって、進みを止めてしまいたくはない。
一応、それも自然な理由とはいえた。
アマリアの仕事はあの肖像画を完成させることなのだから、それが最優先事項だ。
けれどその理由は、フレイディに苦笑いを浮かべさせてしまった。
「そうではないよ」
ひとこと言って、軽く腰を上げた。
アマリアがなんとなく予想してどきっとしたときには、すぐ隣に座り直したフレイディによって、腕の中に捕らえられていた。
アマリアの心臓が跳ねあがる。
抱きしめられた感触、薄着の中から伝わってくる確かなぬくもり。
そしてフレイディのものだろう、ほんのり香る香水のような匂い……。
どくどく心臓の鼓動が速まり、どきどきするだけではなく、あまりの刺激の強さにくらりと意識まで揺れてしまった。




