二人きりの一夜2
「やれやれ、とんだことになってしまったが、助けてもらえて本当に良かった」
食事を終え、流石にここで湯は使えないので手足と顔だけ洗わせてもらった。
再度部屋に落ち着いたあと、フレイディはくたびれたという様子でソファに脱力した。
彼がこのような様子を見せたのは初めてだ。
驚いたアマリアだったが、自分も一人きりだったならそうしていただろう疲労があったので、不思議には思わなかった。
ただ、フレイディの見たことがない一面を見たために新鮮に思ったのだ。
しかしそれだけではなく、プライベートに接した気がして、なんだかどきどきしてしまった。
実際そういう面がなくもないだろう。
夜、同じ部屋でおしゃべりをする以上をしたことなんてないのだから。
暖炉の火もよく回ってあたたかい。
よってフレイディはコートだけでなく、かっちりした作りの上着も脱ぎ、上はシャツだけになっている。
それもまた、体のラインがこれまでより格段によく見えて、アマリアの鼓動を速くした。
アマリアのほうも手足を洗わせてもらうためにジャケットを脱ぎ、上はブラウスとベストだけになっていたので、軽装という点はやはり同じだが。
「本当ですわね。あのままではどうなっていたことか……」
ほう、と息が出る。
馬車で、しかも強い風雨の中など、どれほど心細かったか。
一夜あの気持ちでいることになっていたらと思うと、恐ろしい。
そう言ったアマリアだったが、フレイディが不意に背もたれから体を起こした。
座り直して、アマリアのほうに体を向けてくる。
「すまなかった、俺が無理に『帰る』と言ったばかりに」
眉を下げ、心からすまないと思っている顔で謝られて、アマリアは慌ててしまった。
あの言い方で、罪悪感を感じさせてしまっただろうか?
急いでフォローすることを口に出した。
「そのようなことはございませんわ。こんな事態になるなど、誰もわかりませんでしたもの」
その言葉に、フレイディの表情は少しだけ緩んだ。
笑みの形になる。
「アマリアは優しいね」
こうして気遣ってくれるフレイディこそ優しいのに、こんなふうに言ってくれるのだ。
意外な出来事ばかりが色々あったために、夜も既に更けつつあった。
伝令は朝まで来ないだろう。
今夜は体を休めておくのが最優先だ。
よってフレイディは奥にあった一台の寝台を指差した。
「アマリア、ベッドをお借りするといいよ」




