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二人きりの一夜1

「レノスブル様にお越しいただけるなど身に余る光栄でございます。お泊めできるのに相応しい場がなくて非常に恐縮ですが……」


 強くなった雨の中、馬車を降りて、集落で一番大きな家へと招かれた。


 村長という老齢の人物は非常に丁寧で、しかし言葉通り恐縮したという様子で肩を縮めていた。


 アマリアはその様子に申し訳なくなってしまう。


 こちらの危機を救ってもらったも同然だというのに、これほど負担に思わせてしまって。


 その通りのことをフレイディも言った。


 丁寧に胸に手を当て、礼をし、挨拶した。


「そのようなことはない。一夜の宿を恵んでもらえるだけでどれほど助かるか……、明日、無事に帰ることができたらじゅうぶんな礼をさせてくれ」


 レノスブル家子息であるフレイディが頭まで下げてお礼を言ったのだ。


 村長はかえって更に恐縮した様子で手を振った。


「い、いえいえそのような! もったいのうございます!」


 そんなやりとりで、アマリアとフレイディは一室に通された。


 客間というところで、いくらかの家具はあったが、レノスブルの宮廷とは勿論比べ物にならない。


 生まれてから宮廷や屋敷といった建物にしか暮らしたことのないアマリアにとっては、失礼ながら、粗末としか見えなかった。


 そのようなことを口に出す気などなかったが。


 なにしろ助けてもらっている身だ。


 雨風をしのげるだけで、現状、最上級の場所である。


 それに部屋にある暖炉には火が入れてあって、既にほんのりあたたかかった。


 火が強くなれば、寒さなどかき消されるほどに室温が上がるだろう。


 寒い中でずっと過ごしていた身には、このぬくもりもとても有難かった。


 素晴らしい居場所である。


 しかしベッドはひとつしか置いていなかった。


 それもまた良く言うなら素朴、悪く言うなら粗末であったが、それより一台しかないことが問題だ。


「申し訳のうございます。ここに客人がいらっしゃるなど稀ですので、このような粗末な客間しか用意がなく……」


 案内してきた村長は伯爵家子息とその若奥様をこのようなところに、などと非常に申し訳なさそうだった。


 何度も頭を下げてきたけれど、フレイディもアマリアが思ったのと同じように言った。


 すなわち、現状では有難すぎる場所だということだ。


「いや、本当に構わない。有難くお借りする」


 アマリアはフレイディのその態度には感動してしまった。


 貴族であるフレイディ。


 一介の平民とは天と地ほどの身分差があるのに、下の身分の相手にも偉ぶらないのだ。


 それどころか丁寧すぎる態度だっただろう。


 本当に素敵な方だと思う。


 ただの挨拶なのに、アマリアは伴侶として嬉しい気持ちと、それから少し誇らしいような気持ちも覚えてしまった。


 その挨拶も済み、アマリアとフレイディは二人になった。


 御付きと護衛はまた別の部屋を貸してもらった。


 護衛が二人ほど部屋の前についている以外は、皆、休息が取れるだろう。


 そのうち食事が運ばれてきた。


 それもまた普段食べているものにはほど遠かったが、やはり食べられるだけで有難い。


 だいぶ時間が遅くなっていて、更に心労もあってお腹が空いていた。


 遠慮せずいただくことにする。


 それに味は悪くなかった。


 肉も野菜も集落で作っているのだという。


 そのために新鮮なのだろう。

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