雨の立ち往生3
もう日も暮れて、普段なら夕食も終わっているような時間になりつつあった。
このような時間に外にいるだけでも不安なのに、今は強い雨と、寒い気温と、今夜いられる場所がないかもしれないという心配まである。
アマリアの表情も体も固くなっていた。
その手をもう一度、フレイディが握ってくれた。
「大丈夫だ。なんとかなるさ」
あたたかくて大きな手で、きゅっと握ってくれる。
さっき握られたときより、何故だか強い安心が伝わってきた。
「そう、だと良いです」
不安はなくならないが、少なくとも一人ではないのだ。
フレイディがついていてくれる。
御付きも護衛もいる。
悪いようにはならないだろう。
「それに俺とて剣はいくらか習っているからね、万一の場合はそれでアマリアくらい守ってみせるさ」
アマリアを勇気づけるように言って、笑みを向けてくれる。
アマリアはまだ表情のこわばりは取れなかったけれど、なんとか笑みの形に頬を動かした。
「まぁ、そのような事態にはなってほしくないものですけど」
でも賊などに遭い、剣を振るう事態など御免である。
恐ろしいどころではない。
よってそう言ったが、フレイディも本気ではなかっただろう。
アマリアがなんとか笑みを浮かべたことに安心した、という顔で言った。
「そのくらいの気はあるということだよ」
やり取りをしているうちに、一時間近くが経っただろう。
やっと伝令が戻ってきた。
「フレイディ様! 宿を提供してもらえることになりました!」
御付きがそう報告をして、アマリアは心底安堵した。
馬車の中とはいえ、外で過ごすことはなくなったのだ。
「そうか! それは良かった。甘えようではないか」
フレイディの声も明るくなる。
それで集落へ向かうことに決まって、伝令はそのままレノスブル領へ向かって走っていった。
きっと朝には援護が来るだろう、とフレイディは言った。
つまり、明日の朝か、その少しあとか、そのくらいには帰れそうだということだ。
安堵したアマリアたちを乗せて、馬車はゆっくりした速さではあるが、雨の中を走っていく。
やがて、三十分ほど走った先にあった、小さな集落へ辿り着いた。




