表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/128

好きになってほしい3

「そうでしょうか」


 小首をかしげてしまった。


 同じように聞き返してしまった、と思ったのだけど、多分フレイディは違う点にまたもうひとつ苦笑した。


「夫婦の初めての出会いを話題にしているのだから、もう少しロマンティックに捉えてくれても良くないだろうか」


 そこまで説明されて、やっと思い当たった。


 そう言われれば、確かにその通りだった。


 夫婦の出会い。


 つまり馴れ初め。


 しかしあのアトリエでの出会いがそれならば、第一印象は最悪どころではなかった。


 アマリアはフレイディを叱りつけ、睨んでしまったのだ。


 ……ロマンティックとはほど遠くはないかしら?


 内心、思ってしまったが、今、口に出すのは不適切だというのは流石にわかったので、言葉にはしなかった。


「最悪の第一印象からはじまる恋も良いものだよ。そのぶん、相手の良い部分を大きなものとして受け取れるからね」


 こちらに身を傾けてきて、話すフレイディ。


 しかしアマリアにとっては、同意の気持ちはあまりない。


 それより不思議に感じる気持ちのほうが大きかった。


「フレイディ様からは最悪でしたの?」


 ロマンティック云々を口に出すのはやめようと思ったので、アマリアは違うことを言った。


 しかしフレイディは微笑を浮かべ、小さく首を振る。


「最悪、ではないかな。でもきみからはそうだっただろう?」


 ああ、私のことをおっしゃったのね。


 アマリアは理解し、少し考えた。


 最悪かと言われると……。


「そうですわね。あれほどアトリエをめちゃくちゃにされて、ついかっとしてしまったほどでしたもの」


 今ではもう怒っている気持ちも、引きずっている気持ちもない。


 散々、謝られた。


 そもそも犯人であるレオンにだって悪気はなかった。


 たくさん償いのものもいただいた。


 すっかり水に流した気持ちだったのだ。


 だから単なる事実としてそのまま言ったのだけど、フレイディは居心地悪そうに笑った。


「はは、正直だな……」


「どうしてですの? 今はもう悪い気持ちなどございませんのに」


 アマリアはまた小首をかしげることになる。


 どうもフレイディはアマリアがまだ怒っているとか、いい気持ちでないとか、そんなふうに思っているのではないか。


 そう思ってしまったのだ。


 だからそれは違うのだということを口に出した。


 アマリアの言葉を聞いたフレイディ。


 その表情はすぐに、ぱっと変わった。


「本当かい! じゃあ、好意を抱いてくれているのだね」


 アマリアは脱力した。


 否定はしないけれど、即物的すぎないか、と思ったのだ。


「もう、フレイディ様はどうしてすぐにそういうことにされますの」


 声は呆れた。


 でもフレイディには効いた様子もない。


 アマリアの脱力も気にせず、もうひとつ身を寄せてきた。


 肩が触れ合う。


 流石にアマリアもどきんとしてしまった。


 初夜、軽く抱きしめられたときくらいには近い距離。


 そしてここまで接近し、恋仲に似たような態度を取られたことで、やっと思い当たったといえる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ