好きになってほしい3
「そうでしょうか」
小首をかしげてしまった。
同じように聞き返してしまった、と思ったのだけど、多分フレイディは違う点にまたもうひとつ苦笑した。
「夫婦の初めての出会いを話題にしているのだから、もう少しロマンティックに捉えてくれても良くないだろうか」
そこまで説明されて、やっと思い当たった。
そう言われれば、確かにその通りだった。
夫婦の出会い。
つまり馴れ初め。
しかしあのアトリエでの出会いがそれならば、第一印象は最悪どころではなかった。
アマリアはフレイディを叱りつけ、睨んでしまったのだ。
……ロマンティックとはほど遠くはないかしら?
内心、思ってしまったが、今、口に出すのは不適切だというのは流石にわかったので、言葉にはしなかった。
「最悪の第一印象からはじまる恋も良いものだよ。そのぶん、相手の良い部分を大きなものとして受け取れるからね」
こちらに身を傾けてきて、話すフレイディ。
しかしアマリアにとっては、同意の気持ちはあまりない。
それより不思議に感じる気持ちのほうが大きかった。
「フレイディ様からは最悪でしたの?」
ロマンティック云々を口に出すのはやめようと思ったので、アマリアは違うことを言った。
しかしフレイディは微笑を浮かべ、小さく首を振る。
「最悪、ではないかな。でもきみからはそうだっただろう?」
ああ、私のことをおっしゃったのね。
アマリアは理解し、少し考えた。
最悪かと言われると……。
「そうですわね。あれほどアトリエをめちゃくちゃにされて、ついかっとしてしまったほどでしたもの」
今ではもう怒っている気持ちも、引きずっている気持ちもない。
散々、謝られた。
そもそも犯人であるレオンにだって悪気はなかった。
たくさん償いのものもいただいた。
すっかり水に流した気持ちだったのだ。
だから単なる事実としてそのまま言ったのだけど、フレイディは居心地悪そうに笑った。
「はは、正直だな……」
「どうしてですの? 今はもう悪い気持ちなどございませんのに」
アマリアはまた小首をかしげることになる。
どうもフレイディはアマリアがまだ怒っているとか、いい気持ちでないとか、そんなふうに思っているのではないか。
そう思ってしまったのだ。
だからそれは違うのだということを口に出した。
アマリアの言葉を聞いたフレイディ。
その表情はすぐに、ぱっと変わった。
「本当かい! じゃあ、好意を抱いてくれているのだね」
アマリアは脱力した。
否定はしないけれど、即物的すぎないか、と思ったのだ。
「もう、フレイディ様はどうしてすぐにそういうことにされますの」
声は呆れた。
でもフレイディには効いた様子もない。
アマリアの脱力も気にせず、もうひとつ身を寄せてきた。
肩が触れ合う。
流石にアマリアもどきんとしてしまった。
初夜、軽く抱きしめられたときくらいには近い距離。
そしてここまで接近し、恋仲に似たような態度を取られたことで、やっと思い当たったといえる。




