表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/128

好きになってほしい2

「そうですか? ありがとうございます」


 来たるクリスマスを思わせるような濃緑色。


 小花が薄く散りばめられていて、落ち着いた中にもかわいらしさがある生地。


 フリルやレースは裾にしかついていない、大人しいものだ。


「ああ。大人っぽくも見えるね」


 フレイディはモデルの位置に立って、ポーズをつけつつも話をしてくる。


 今は大まかな塗りをしているところで、過度に集中する段階ではない。


 アマリアも特に気にすることなく、それどころか苦笑した。


「褒め過ぎですわよ」


 油絵だが、下塗りは水彩や色鉛筆でおこなうこともあるのだ。


 うっすら色を付けておいて、その次に、それらの色をガイドにして油絵の具で本塗りをする。


 フレイディの服は白と黒、差し色のワインレッドが基調。


 背景の垂れ幕もワインレッドなので、色が混ざってぼんやりした印象になってしまわないよう、質感を描き分けるのに気を使わなければ。


 本塗りに入った今から、気をつけたい点を考える。


「はい、お疲れ様でした。少し休憩にいたしましょう」


 きりの良いところまで作業がきた。


 なので少し休憩にしようと思って、アマリアはフレイディに声をかける。


 絵筆をデスクに置き、ふぅと息をついたとき、フレイディがこちらへやってきた。


 ずっと立っていたのに、あまり疲れた様子ではない。


 むしろ楽しそうだった。


「やはり俺らしさがあるな。ポーズからか、色合いからか……すごいものだ」


 アマリアの前に置いたイーゼルに立てられた絵を見て、しげしげと見つめ、そう言ってくれる。


 褒められれば、嬉しいに決まっていた。


「そうでしたら嬉しいです」


 アマリアの言葉は素直に弾んだ。


 アマリアが見上げた先のフレイディの視線も緩む。


 しかしそれで終わらずに、すっと、その高い身長がかがめられていた。


「こうしてきみとアトリエにいると、初めて会ったときを思い出すな」


 キャンバスの前に座っていたままだったアマリアは、上から覗き込まれる形になる。


 そんな体勢で話を切り出されるものだから、きょとんとしてしまった。


 これほど近付いてする話だろうか。


「ええ……、まぁ、初めてお会いしたのがアトリエでしたのは確かですね」


 アマリアが不思議そうな声になったからか、フレイディのほうは苦笑する。


「確かですねって、そんな、素っ気ないな」


 近くで苦笑されて、その『困ったな』という表情はよく見えた。


 でもそれだけに、アマリアのほうはよくわからなかった。


 どうして苦笑になるというのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ