好きになってほしい2
「そうですか? ありがとうございます」
来たるクリスマスを思わせるような濃緑色。
小花が薄く散りばめられていて、落ち着いた中にもかわいらしさがある生地。
フリルやレースは裾にしかついていない、大人しいものだ。
「ああ。大人っぽくも見えるね」
フレイディはモデルの位置に立って、ポーズをつけつつも話をしてくる。
今は大まかな塗りをしているところで、過度に集中する段階ではない。
アマリアも特に気にすることなく、それどころか苦笑した。
「褒め過ぎですわよ」
油絵だが、下塗りは水彩や色鉛筆でおこなうこともあるのだ。
うっすら色を付けておいて、その次に、それらの色をガイドにして油絵の具で本塗りをする。
フレイディの服は白と黒、差し色のワインレッドが基調。
背景の垂れ幕もワインレッドなので、色が混ざってぼんやりした印象になってしまわないよう、質感を描き分けるのに気を使わなければ。
本塗りに入った今から、気をつけたい点を考える。
「はい、お疲れ様でした。少し休憩にいたしましょう」
きりの良いところまで作業がきた。
なので少し休憩にしようと思って、アマリアはフレイディに声をかける。
絵筆をデスクに置き、ふぅと息をついたとき、フレイディがこちらへやってきた。
ずっと立っていたのに、あまり疲れた様子ではない。
むしろ楽しそうだった。
「やはり俺らしさがあるな。ポーズからか、色合いからか……すごいものだ」
アマリアの前に置いたイーゼルに立てられた絵を見て、しげしげと見つめ、そう言ってくれる。
褒められれば、嬉しいに決まっていた。
「そうでしたら嬉しいです」
アマリアの言葉は素直に弾んだ。
アマリアが見上げた先のフレイディの視線も緩む。
しかしそれで終わらずに、すっと、その高い身長がかがめられていた。
「こうしてきみとアトリエにいると、初めて会ったときを思い出すな」
キャンバスの前に座っていたままだったアマリアは、上から覗き込まれる形になる。
そんな体勢で話を切り出されるものだから、きょとんとしてしまった。
これほど近付いてする話だろうか。
「ええ……、まぁ、初めてお会いしたのがアトリエでしたのは確かですね」
アマリアが不思議そうな声になったからか、フレイディのほうは苦笑する。
「確かですねって、そんな、素っ気ないな」
近くで苦笑されて、その『困ったな』という表情はよく見えた。
でもそれだけに、アマリアのほうはよくわからなかった。
どうして苦笑になるというのか。




