私の知らない貴方3
手を綺麗に拭いたフィオナは、アマリアの隣の席に座る。
すぐに執事が新しくお茶を運んできて、話は三人でになった。
レオンはあずまやの入り口でゆったりうずくまる。
レオンには水が出てきて、それをたっぷり飲んで満足したようだ。
「フレイディにさっき会ってきたの。とても明るい様子だったわ」
散歩というのを随分長くしたのかもしれない。
喉が渇いていた様子のフィオナはすぐに紅茶を半分ほど飲み、息をついてからそう話した。
「あら、フレイディ様に」
「ええ、フレイディにも会いたいと思っていたから」
アマリアはちょっと目を丸くしてしまったのだけど、フィオナはにこっと笑った。
「若奥様とは仲良くやっているかとか、たくさん話してくれたわよ。こんなにかわいらしい若奥様をいただいて幸せね、って言ってきたわ」
今度はゆっくりお茶を飲みつつフィオナが話すのを、アマリアは楽しい気持ちで聞いた。
「まぁ、ここで話していたことと同じね」
「ええ、本当に」
ジェシカが軽く口元に手を当て、おかしそうに言う。
アマリアも、同じ気持ちで微笑になった。
話題がそこからアマリアの絵に移っていったのも同じだった。
「さっきフレイディに見せてもらったの。私は絵には詳しくないからまだよくわからなかったけれど、完成がもう楽しみになったわ」
どうやら描きかけのものを、フレイディがフィオナに披露したようだ。
アマリアはくすぐったい思いになってしまう。
まだ描きかけも描きかけ……着色すらまともにはじまっていないところなのに、こうして見られてしまうのは気恥ずかしい。
でも宮廷画家として、進捗は共有しておかなければいけないのだ。
親しい身内の間で見られることにはもう慣れた。
「精一杯やらせていただきます」
なのでアマリアの返事ははにかんだ。
はっきりそう答えたけれど、ちょっと声に照れは混じっただろう。
「頑張ってね。絵が特技なんてすごいわ」
「いえ……本当に趣味であるだけです」
フィオナに褒められて、ますますくすぐったくなった。
本当に、自分が継承式典用の絵を描くなど身に余る栄誉。
でも趣味であることに変わりはないので、その通りのことを言う。
「いいえ、そんなことはないわ。私も昔、お勉強の時間に絵を習ったことはあったけれど、あれほど正確には到底描けなかったもの。そもそも苦手だったし」
しかしフィオナはそう言った。
その発言は、ジェシカがくすくすとはっきり笑う。
「フィオナはどちらかというと、運動のほうが優秀だったものね」
からかうような言葉だったが、その中には確かに孫を愛おしく思う気持ちがたっぷり入っていた。
アマリアは今度、あたたかい気持ちの笑みが浮かんでくる。




