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私の知らない貴方1

 それでも『若奥様』という立場であるのは変わらない。


 アマリアは少しずつ、レノスブル家の者たちとも交流し、仲を深めていくことになっていた。


 レノスブル卿と奥様は幸い、アマリアのことを気に入ってくれたようだった。


 そもそも契約結婚なのだから、本当の若奥様とは思っていないのもあるかもしれないけれど。


 本当に、一年間の予定などではなく伯爵公の奥様になるのなら、もっと厳しい目で審議されたのかもしれないわ、とアマリアは思うのだった。


 しかしレノスブル家の宮廷には、ほかにも身内の方がたくさん住んでいる。


 フレイディの祖父母にあたる人物や、おじ、おばなども何人か。


 子供はあまりいないようだけれど、たまに訪ねてくることはあった。


 そのすべての者に好かれるのは無理だろうとアマリアは思っていたけれど、予想より悪いことにはならなかった。


 全員が、アマリアのことを、もろ手を上げて歓迎してくれたわけではないだろう。


 それでも表立ってアマリアに冷たくする者は、今のところいない。


 その点は、まだ年若い娘でしかないアマリアにとってはとても安心することであった。


 メイドや侍従も何人かついてきているとはいえ、血縁としては一人きり。


 邪険にされないだけでも喜ばしく、安堵できる。


 特にフレイディの祖母はアマリアにとても良くしてくれた。


「かわいらしい奥様を娶ることができて、あの子も幸せね」


 ある日、お茶に招かれてアマリアはそんなふうに言われた。


 外のあずまやのテーブルに二人で着いて、紅茶をお供にした昼下がり。


 フレイディの祖母は、ジェシカという名前だ。


 もう何十年も前、ちょうどアマリアくらいの年頃に、レノスブル家に嫁いできたのだという。


 その話をしてくれて、アマリアは興味深く聞いた。


 祖母ではあるが、外見的な特徴としては、あまりフレイディと一致していなかった。


 きっと白髪もあるだろうが、淡い金髪をしていて、目は緑。


 どうやらフレイディは黒髪をしている祖父からの血が濃かったようだ。


 ただ、顔立ちだけはフレイディと似たような印象があるので、祖母であるということはアマリアもすぐに納得した。


「フレイディ様だけでなく、おばあさま方にも良くしていただいて、私こそとても幸せです」


 アマリアは繊細な模様が入ったティーカップから熱い紅茶をいただきながら、笑みを浮かべた。


 お付き合いという気持ちがなくもないけれど、本心だ。


 もうすっかり秋。


 風も涼しくなってきていて、外のあずまやでのお茶もそろそろ季節的におしまいだろう。


「絵はどうかしら? 十日ほど前に見せていただいたけれど、あれから進んだかしら」


 話はアマリアの描く肖像画のことになっていった。


 アマリアは進捗具合や、どんな気持ちで描いているかなどを説明する。


 絵の話になれば、自然と声は弾んだ。


 それこそ若い娘らしく、饒舌になってしまう。


 そんなアマリアのことを、ジェシカはにこにこしながら見て、相槌を打ってくれた。

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