肖像画の真実3
「わかりました。許せるかどうかはわかりませんが……、このまま続けて請けましょう」
前半は曖昧だったが、後半はきっぱりしていた。
ここまできておいて放り出すなど嫌だ。
事実として無理である以上に、一人の画家として嫌だと思う。
素晴らしいものになりそうだという予感がある絵を、途中で放り出す形になんてしたくない。
それにそもそも、この仕事を楽しそう、是非やってみたい、と思ったのは自分であり、その気持ちも本当。
それならば、用途はひとまず気にしないことにすれば、なにも変わらないということになる。
「本当かい! ありがとう!」
アマリアの返事を聞いたフレイディの顔が、ぱぁっと輝いた。
ほっとしたという以上に、喜びの表情になる。
まったく、詳しい本当の説明もなしに私に打診して、呑ませたというのに、こんなお顔をされて。
本当に……ずるいです。
アマリアは今度、内心でため息をついた。
「ですが、勘違いしないでくださいませね。私は肖像画を描きたいのですし、立派に完成させたいのです。栄誉が欲しいわけではないのですよ」
そこは釘を刺しておかなければ、と言ってそう言ったのに、それはフレイディに一蹴されてしまった。
笑顔の一蹴だった。
「そのようなこと、わかっているよ。きみはそんな人物ではないし、そもそも、栄誉がついてくるなど、今、知ったのだろう」
アマリアのことを信頼している、という口調で言葉だ。
嬉しくなりかけたアマリアだったが、指摘するべきところが一点だけあった。
「ええ。貴方の説明不足のせいで」
そもそも説明がなかったのだから、栄誉があるなど今、知ったのだといえる。
じとっとした目で言ったアマリアに、フレイディは苦笑いした。
頭に手をやる。
「はは、手厳しい」
苦笑されて、アマリアはもう一度、ため息になりそうだったけれど、それはひとまず呑み込んだ。
「そういうことですから、当初の予定通り、一年間で描き上げるように進めたいと思います。間に合うのですよね……?」
質問にはすぐに「ああ」と肯定が返ってきた。
「一応、二十八になる頃までには、という予定でいるからね。父上もまだまだ元気でいらっしゃるし、そう急ぐこともないんだ」
そういうものなのね、とアマリアは思った。
エヴァーレ家はアマリア以外に子供がいない。
つまり直接の継承をする息子という存在がいないのだから、貴族のそういったことにアマリアはあまり詳しくなかった。




