肖像画の真実1
「継承式典用肖像画……!?」
翌日、アマリアは広間で呆気にとられた。
今日の昼過ぎは肖像画の作業になっていた。
ランチを摂ってから、今日の作業場とした広間へ向かったのだけど、そこでとんでもない事実を聞いてしまった。
「ああ。言っていなかったかな」
なのにフレイディはしれっと首をかしげるものだから、アマリアは声を上げる。
「聞いておりません! そ、そんな大舞台にお出しするようなものだったなんて……!」
まくしたてるようになった様子と言い方は、まったく、初めてフレイディに出会ったあのときと同じだった。
フレイディはアマリアのそれに「まずかった」と感じたらしい。
やはりあのときと同じように、手を胸の前まで上げた。
ちょっとたじろいだ様子だ。
「そ、そうかい。それはすまなかった。でも変わらないだろう? 素敵な肖像画なら、どこに出したって……」
そう言われたけれど、変わらないわけはない。
アマリアは頭がくらくらするやら、ちょっとムッとするやらの気持ちを味わった。
「変わりますっ!! そのようなご立派すぎる目的で使われるのでしたら、お断りしておりましたわ!」
フレイディを、キッと睨みつけて断言する。
そうだ、そんな重大すぎる目的のものだなんて思わなかった。
それなら多少の腕は自負しているものの、プロ画家ではない自分が描くには、だいぶ気が引けてしまうではないか。
そう、フレイディからの依頼である肖像画は、二年ほどあとという計画になっている、レノスブル家爵位の継承式典で使われるのだという。
そして式典で使われるということは、これから『伯爵公が継承の儀を迎えたときのお姿』として、半永久的に残るということになる。
噛み締めてしまうと、アマリアはもうくらくらするでは済まなくなりそうだった。
あのとき伯爵公が言われた「重大なことであるから、どうか頼んだ」の本当の意味を、アマリアはやっと、遅すぎる今、知ったのであった。
「そうか。では言わなくて良かったね」
けれどフレイディの言ったのはそれだったので、アマリアはあんぐり口を開けた。
言わなくて良かった、なんて、つまり騙すようにして良かったということではないか。
「な、そ、そんな……! 騙したというのですか!?」
なんて酷い。
契約結婚なんてものまでしておいて、騙したというのだろうか。
憤慨しそうになったアマリアだったが、今度、フレイディは焦らなかった。
少し落ち着いたようで、説明の口調になる。
「そんなはずはないだろう。俺は肖像画になるなら、心から気に入るものが欲しいんだ」
まずそう言われて、アマリアは黙るしかなかった。
ひとまず説明を聞いてみよう、と思う。




