初夜は甘くて、ほろ苦く……?7
言われたことは、引き留めるものではなかった。
アマリアはほっとする。
それで手を取られて、フレイディの部屋を出た。
アマリアの部屋までは少し歩くのだ。
夜中なので、ほとんど会話はせず、静かに廊下を歩いていった。
アマリアの部屋に着いて、ドアを開けたとき、フレイディは「おやすみ」と言ってくれた。
しかし、そのとき改めてアマリアの手を取ってくる。
「絶対に俺のことを好いてもらうからね。帰るなど言わせないほどに」
宣言のように手を持ち上げられて、手の甲にくちづけられる。
アマリアは戸惑って、なんと返事をしたものかわからなくなったが、その前にフレイディがそっと手を離してきた。
「では、おやすみ。また明日ね」
「はい……、おやすみ、なさいませ」
それで帰っていってしまった。
アマリアは静かに挨拶をして、その後ろ姿を見送る。
見えなくなってから、アマリアは部屋に入り、ドアを閉めた。
今度こそ眠ろうと、ベッドのあるほうへ向かう。
まったく、不思議な時間だった。
初夜だというのだから、妙なことがあるのではないかと、緊張やら不安やら警戒でいたのが嘘のようだった。
それらとはまったく違った意味や理由で、おかしな時間だったのだから。
フレイディ様は、私のことを好いてくださっているなんて。
ベッドに潜りながら、アマリアはもう一度それが頭に浮かんで、また頬が熱くなるような気持ちを感じてしまった。
嫌だなどと思うはずがない。
契約としてでも結婚していいと思えたのは、アマリアのほうだって同じなのだ。
ちっとも好意と呼べる感情がなければ、承諾などしていない。
だけどフレイディのように堂々と「きみを好いている」などと言えるはずはなかった。
だからあのような返答になってしまったのだけど。
フレイディ様は「好いてもらえるように頑張る」なんておっしゃったけど、どういう意味なのでしょう。
色々とわからないことだらけで、アマリアはぐるぐるしてきてしまったし、そこへ本格的な眠気が襲ってきた。
まぁいいか、考えるのは明日で、という気持ちになってきてしまう。
アマリアはそっと目を閉じて、一日の疲れから、数秒もしないうちに眠りに落ちていた。
夢も見なかったように思う。
ただ、ぽかぽかあたたかいような感覚はあった。
数十分前まで飲んでいたココアの温度がまだ残っていたのか、それとも。
フレイディに触れられ、軽く抱かれる形になっていたのが残っていたのか。
それすらはっきり理解することなく、アマリアはぐっすり寝入ってしまった。




