肖像画・製作スタート!1
「肖像画というものは五年ぶりだよ」
肖像画用に仕立てられたという盛装を身に着けたフレイディは、なんだかはにかんだような笑顔で言った。
場所はアマリアのものになった、新しいアトリエだった。
案内されたとき、アマリアの目は、ある意味自室を見たときより輝いてしまったくらいだ。
それほど立派で、かつ、居心地が良さそうだった。
「突貫で済まないが、アトリエも準備したよ。足りないものや必要なものがあったら言ってくれ。肖像画を描くのに不足があってはいけないからね、遠慮なく、だよ」
フレイディは念を押すようにそう言ってくれて、アマリアは「わかりました」とお言葉に甘えることにしておいた。
それで現在、アトリエでの初仕事をしている次第。
「そうなのですね。そのときの画家さんに頼まれなかったのですか?」
まず構造をしっかり把握するべく、アマリアは衣装の具合を見て、必要なことをノートに書きつけていく。
作業をしながら何気なく返事をして、質問した。
しかし、それには少し寂しい理由が返ってきた。
「ああ……俺としてはだいぶ気に入る絵を描く画家だったがね、あの頃から既に老齢だったのだ。頻繁にここへ通うのが大変になったからと辞退されてしまったんだ。今は家で静かに趣味として描いているそうだよ」
なるほど、とアマリアは納得した。
絵を描くにも色々とある。
アトリエで描くなら、目や腕が衰えない限り可能だろうが、出向くのに支障があるために活動を終了することもあるのだと、初めて知った。
まだ生まれて十六年しか経っていないアマリアにとっては、あまり想像が思い浮かばないことだったのだ。
でもやはり少し寂しい、と思ってしまった。
「それは残念でしたわね」
よってそう言った。
フレイディもそれに同意した。
「そうだね。でも新しく素敵な画家様に出会えて依頼できることになったから、その点は良かったと思うんだよ」
ノートに採寸を書きつけていたアマリアに向かって、フレイディはにこっと笑う。
またしてもアマリアを口説くようなことを言って。
「ですから、かいかぶりすぎだと言っております」
しかしここで数日暮らし、アマリアももうだいぶ慣れたのだ。
少々、しれっとした、という様子になって返事をした。
その口調にフレイディは苦笑する。
「アマリアは割合ドライだね」
そんなふうに言われたけれど、それは確かだ。
他人からもそう評されることがあり、自分でも自覚している性格だった。
「そうですわね。お気に召さなければ私は帰っても……」
「ああ! そういう意味ではないよ!」
膨れるように言ってみせると、それが形だけの言葉とはわかっていただろうが、フレイディは慌てて制止してくる。
フレイディとのこんなやり取り。
アマリアにとっては不快なものではなかった。
むしろ楽しいと言えるかもしれないくらいだ。
ただ、口説くような内容のときは困ってしまうだけで。
どう反応したものか、いまいちわからない。
フレイディがどういうつもりで口に出すのかもわからない。
戸惑いの種であった。




