結婚式への準備
それ以来、アマリアの日々は主にふたつの作業になった。
ひとつは結婚式のための準備。
ドレス作り、会場や来賓の手配、指輪の受注……。
やることなどそれら以外にもたくさんあるだろうが、ひとまずそれらのほとんどは勿論、屋敷の使用人などが進めてくれる。
時間がないので特別に急いで手配している次第だ。
だがこれも引越しと同じ、ごく身近なことに関してはアマリア自身がするしかない。
主に結婚式に着るウエディングドレスのことが大半だった。
採寸からはじまって、度重なる着心地やサイズの調整、アクセサリーの選定……。
なにしろ伯爵家と男爵家の婚姻なのだ。
盛大なものになると決まっていた。
ドレスだって半端なものを身に着けるわけにはいかない。
それにアマリアとしても、契約とはいえ、結婚だ。
素敵なウエディングドレスは憧れであったし、その準備と思えばむしろ乗り気だった。
ほかには招待状の準備。
式に招く来賓に送る招待状のデザインをアマリアがした。
イラストも少し添えた。
そのあと、印刷の手配や実際の送付は使用人の仕事だが、サンプルを見たフレイディは感嘆してくれた。
「とても素晴らしい。流石、画家様だけあるね」
「そ、そうでしょうか? ありがとうございます」
アマリアは素直にお礼を言い、また照れくさくなってしまった。
自分の能力や仕事を認めて、褒めてもらえるのは嬉しい。
ちなみにフレイディの両親にも好評だった。
フレイディとまったく同じように「とても素敵だ」と言ってくれたものだ。
アマリアが絵画を得意としていることや、これからフレイディの肖像画を描くことになった件は、勿論伝えている。
契約であるということは、流石に親に伝えないわけにはいかない。
フレイディが伯爵家令息であっても、まだ爵位を継承しているわけではないのだ。
親の管理下である立場。
よってこの結婚が契約結婚であることは、両親はじめ、ごく身近な者には把握されている。
アマリアが嫁いできた本当の理由も知られているのだ。
肖像画に関してはフレイディの父……、立派な髭をたくわえて、高い身長、フレイディと同じ黒髪に精悍な顔立ちのレノスブル卿直々に、「重大なことであるから、どうか頼んだ」と言われて、アマリアは「精一杯やらせていただきます」と丁寧に返答したものだ。
つまり、アマリアの立場としては、仮の若奥様でありながら宮廷画家といえるのだった。
そしてふたつめの作業は、その肖像画に関するものだった。
一年間でできるはずと言ってしまったために、そう猶予はない。
すぐに取り掛かるべきだった。
それで式を挙げて正式な夫婦となる前に、取り掛かることにしたわけだ。
取り組みをはじめた日は、このような感じであった。




