溺愛の予兆……?1
「これからお世話になります」
多少、身の回りの荷物を一緒に積むために、以前より大きめの馬車で、アマリアはレノスブル家の宮廷へ引っ越した。
メイドたちに付き添われ、丁寧にスカートを持ち上げて礼をする。
「俺こそお世話になるよ。改めて、どうぞよろしく」
フレイディときたら、随分上の身分だというのに、胸に手を当て、大変丁寧なお辞儀をしてくれたものだ。
アマリア御付きの使用人たちが、レノスブル家の使用人たちと打ち合わせや、仕事の説明などを受ける間に、フレイディがアマリアに宮廷内の案内をしてくれることになった。
フレイディ様直々に、とアマリアは恐縮したのだけど、押し切られてしまった。
「アマリアにはこれから若奥様になってもらうんだ。俺がすべきだろう」
フレイディは以前より砕けた口調になっていた。
なにしろ、一ヵ月後には正式に式を挙げ、夫婦になるのだ。
お互い、いつまでもかしこまってはいられない。
一人称も変わっていた。
きっと家、プライベートではそれが自然だったのだろう。
若奥様、なんて言われてしまうのはだいぶくすぐったかったけれど、それが事実だ。
アマリアは素直に受け入れておいた。
「ここがアマリアの部屋だ。足りないものがあったら言っておくれ。なんでも追加しよう」
最初に紹介されたのは、これからアマリアの私室になる部屋だった。
二階の端にある部屋で、今まで空き部屋だったところだそうだが、大変かわいらしい部屋であった。
「とても素敵です……!」
ドアを開けられ、入って中を見たとき、アマリアは感激してしまった。
壁には、すみれ色に控えめな花柄が入った壁紙。
窓は大きく、こちらは濃い紫色のカーテンがかかっていた。
内側にはレースのカーテンもついている。
家具もかわいらしかった。
白を基調にされていて、テーブルやデスク、椅子は猫脚。
ソファもこれまた紫色を基調とした花柄のカバーがかかっている。
その他、棚だのクローゼットだの、奥の小さな別室にはベッドだの……。
様々な家具と備品があった。
色はほとんど、白か紫系のものだった。
ちょっと不思議に思ったが、フレイディが言った。
「はじめに訪ねてくれたとき、すみれ色のドレスだっただろう。とても似合っていたし、好きかと思ったんだ」
そんなところまで見て、覚えてくださっていたなんて。
アマリアは嬉しく思ってしまった。
実際、紫色は好きだった。
瞳の色なので自身に似合っていると思うし、周りからもそう言われる。
それで好きになったのもあるのだろう。




