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正式依頼と契約結婚2

「毎日レノスブル領にお邪魔するわけにはまいりませんし、遠くて少々不都合です」


「ああ……そうか。そういうことになるか。確かに、画家のようにレノスブル領の街に住んでいるわけではなかったものな……それは盲点だった」


 フレイディはそこでやっと気が付いたという声になる。


 アマリアとしては少々呆れた。


 夢中になるあまり、現実的なスケジュールなども飛んでいたなんて。


「それに、女性が頻繁にレノスブル家にお邪魔して出入りしておりましたら、おかしな噂でも招きかねません。それではフレイディ様のご迷惑になりますし」


「なるほど。確かに噂好きの者の的にはなってしまうかもしれないね」


 困ったな、という顔になったフレイディはあごに手をやった。


 軽く撫で、考えている様子になる。


 これで諦めてくれるでしょう、とアマリアは思った。


 なにしろ障害が大きくて多すぎるのだから、物理的に無理だ。


 しかし考えていた様子だったフレイディが、不意に表情を変えた。


 ぱっと明るくなる。


 それを見て、何故かアマリアの心に警戒が生まれた。


 これはなんだかとんでもないことを言われるのでは。


 そんな予感が生まれてしまったのだ。


 そしてそれは的中した。


「よし、アマリア嬢! 私と結婚してくれたまえ!」


 アマリアの意識は一瞬、空白になった。


 一体なにを言われたのか、とわからなくなる。


 その間にもフレイディは、絵をテーブルに置いて、つかつかと近寄ってきて、アマリアの手を取った。


 白い手袋の手で、きゅっと握ってくる。


「必ず幸せにしようじゃないか」


 あたたかくて大きな手で包み込むように握られて、アマリアはやっと、はっとした。


 かぁっと顔が熱くなる。


 一体なにを言われたのか。


 もう一度、そう思ってしまった。


「え、い、いえいえ!? なにをおっしゃっているのですか!?」


 慌てて言った。


 きっと顔が赤いだろうが、気にしている場合ではない。


「なにって、結婚してくれと言っているのだが……」


「そうではありません!」


 アマリアはつい声を上げてしまった。


 どうしていきなりプロポーズなどされているのか、不可解にもほどがある。


 なのにフレイディは「なんの問題もないし、おかしなことではない」とばかりに、説明してくる。


「結婚といっても、契約結婚だ」


「……はい? なんですか、それは」


 そう言われても、アマリアが初めて聞く言葉だった。


 首をかしげてしまう。

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