正式依頼と契約結婚1
「想像以上だ……!」
両手で絵を持ち、しげしげと眺めてから、フレイディは感嘆をたっぷり乗せた声で吐き出した。
絵を見つめる目も、きらきら輝いている。
約一ヵ月後、絵は完成した。
とっくに夏になり、ぎらぎら暑い太陽の中でアマリアは馬車に乗り、レノスブル家を訪ねてきた。
それで完成品を渡し、見せたところ、フレイディは大変な感動の様子を見せてくれた次第。
「お気に召しましてなによりです」
アマリアは心から安堵し、また嬉しくなった。
ここまで喜んでもらえて、また気に入ってもらえて、頑張って描いて本当に良かったと思う。
「あのとき贈った薔薇を描いてくれたのだね」
フレイディはそこまで気付いてくれたらしい。
嬉しそうな声でそう言った。
すぐに言い当てられてしまったことに少し恥ずかしくなりつつ、アマリアは肯定した。
「ええ、とても美しかったので」
「……そういうところもきみは気が回るな」
感嘆したように言われてしまった。
更にアマリアを気恥ずかしくするような言葉だ。
「ありがとう。確信していたが、私はきみの絵に強く心惹かれてしまうようだ。よって、肖像画を是非依頼したい」
なんとなくそうなるのではないかと思っていたアマリアにとって、フレイディからのその言葉は予想の範疇だった。
だが、アマリアは決めていた答えを言う。
「大変ありがたく存じますが、それはあまり適切でないと思いますの」
困った声になった。
顔には出ないように気を付ける。
だって本当は請けてみたい。
大きく、立派で、豪華になるだろう肖像画を描いてみたい。
だけどやはり、問題がある。
しかもいくつかある。
フレイディはアマリアの濁った答えに、不思議そうな顔になった。
「どうしてだい。ちゃんと画料は払うよ」
「い、いえ、そういった点ではなくてですね」
金額が気になったわけではないので、アマリアは慌てて否定した。
フレイディならしっかりした人物だから、じゅうぶんすぎるほどにお金を渡してくるに決まっている。
それはかえって勿体ないこととして気になってしまうし、それにそこは重大な点ではない。
「肖像画など、一朝一夕では描けませんわ」
「それはそうだろうね」
アマリアは順々に説明していくことにする。
まずひとつめ。
フレイディは頷いた。




