フレイディの不思議4
「さ、できましたよ。そろそろ毛先を切ったほうがよろしいかもしれませんね。少々パサついてきてしまいましたし、少し切ったほうが美しく伸びますから」
ブラシを離して、アマリアの肩にぽんと手を乗せて、ハンナが終わりを告げる。
アマリアは綺麗にとかしてもらった髪に、そっと触れた。
丁寧に洗ってもらったうえに、念入りにブラッシングまでしてもらったのだから、つやつやになっている。
「そうね、じゃ、今度お願い」
傷んでいると言われたのはよくわからなかったけれど、自分よりもハンナのほうが詳しいに決まっている。
アマリアは素直にそう言った。
「かしこまりました。では、お支度をしてまいりますね」
「ええ」
ハンナは笑顔で受けて、そして次の支度、最後の寝支度を整えると言って、出ていった。
アマリアは一人になる。
まだ閉めていない窓の外には月が見える。
先日、新月だったので、まだ月は細かった。
猫の爪のような形をしている。
恋事、ねぇ。
なんとなく、さっきの話題を反芻してしまった。
恋事。
興味がないわけではないけれど、あまり積極的にとは思わないし、このままでいい。
いつかはなるようになるのだし、そのときでいいわ。
そう思いはしたものの、フレイディの名前が同時に出たために、なんとなくフレイディのことを考えてしまった。
良い方だと思う。
素直で、優しくて、物腰柔らかで丁寧で、見た目も美しくて……。
でも恋をするかと言われたら、だいぶ疑問であった。
気持ちがまだそこまで至っていない、というだけかもしれないけれど。
ただ、またお会いしたいとは思った。
お会いして、一緒に過ごせばきっと楽しい時間になるのだという確信がある。
今はそれが一番良いことじゃないかしら。
アマリアはそう思っておくことにし、立ち上がって窓を閉めた。
レースのカーテンも引く。
明日は午前中が勉強の時間。
午後には父とお茶を飲む予定になっていたが、そのあとはフリーだ。
絵に取り組めるだろう。
既に夕方の時間が一番楽しみになってしまいながら、アマリアは自分でも寝支度をするべく、部屋の中へ戻っていった。




